6,200万人の成人が受診する大規模予防・健康診断プロジェクト始動

(ロシア、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年07月22日

ロシアでは、健康寿命の伸長に向けて昨今、18歳以上の国民に定期的な予防診断・健康診断(注1、以下、診断)を義務付けるなど、予防医療の体制整備に注力している(2019年5月1日記事参照)。連邦政府は7月8日、2019~2020年にロシア全土で成人を対象に診断を実施する連邦政府指示(2019年6月27日付第1391-r号)に署名したと発表した。

この指示では、診断は該当する特定グループの成人に対して無料で実施するとし、連邦および地方の強制医療基金、医療保険会社、連邦保健監督局は診断の実施状況に関する管理を行い、保健省と科学・高等教育省、教育省、デジタル発展・通信・マスコミ省、スポーツ省、運輸省、労働・社会保障省はテレビ、ラジオ、インターネットを通じて、診断受診情報の普及を行うとしている。

今回の指示に先駆けて5月6日、18歳以上の国民に対して毎年の医師による予防診断、18~39歳の国民に3年に1度、40歳以上と傷痍軍人など特定カテゴリーの国民に毎年、健康診断の受診を義務付ける保健省規程(2019年3月13日付第124n号)が施行された。併せて、連邦法第353-FZ号(2018年10月3日付)で労働基本法を改正し、健康診断受診のために全労働者に3年に1回1日の有給休暇、年金受給可能年齢に達した、あるいは同年齢から5歳以内の労働者に、年1回2日間の有給休暇を取得できる権利を付与した。

タチヤナ・ゴリコワ副首相は7月8日に開催された政府会合で、2019年に6,200万人が診断を受けることになるが(2018年の受診者数2,100万人)、地方では診断の大規模な実施に対する批判が少なからずあったため、今回の連邦政府指示を起草したと説明。診断を受診できる医療機関のリストと情報提供の実施、夕方や土曜日の受診に向けた医師・医療従事者の確保、全ての診断を1つの医療機関で可能とする体制整備、農村部・小規模集落の高齢者が受診のために都市部へ移動できるようにするための車両配備などを行ったと強調した。

日本企業にも診断分野へ参画する動きが見られる。丸紅は6月25日にロシア鉄道(注2)と、ハバロフスクに健康診断・予防医療サービスを提供する「日ロ予防医療診断センター」(仮称)を設立する覚書を締結した。亀田総合病院や九州大学病院など日本の医療機関の協力に基づく現地の医療従事者への教育支援や遠隔コンサルテーションなどを通じ、健康診断、外来診療、画像診断、日帰り治療といった予防医療サービスを提供するもので、開業時期は2021年10月を予定している。

(注1)3月13日付の保健省規程第124n号によると、予防診断とは、疾病・罹患(りかん)リスクの早期発見と患者へのアドバイスを行うもの。健康診断は、患者の健康状態を把握するために一連の検査を実施するものとしている。健康診断の枠内で予防診断も行われる。

(注2)ロシア鉄道はロシアの国有鉄道会社で、傘下に170を超える医療施設を有し、ロシア最大の病院ネットワークも形成している。

(齋藤寛)

(ロシア、日本)

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