日系企業が財務省と初の対話会合、課題の改善促す

(ベトナム)

ハノイ発

2019年10月16日

ベトナム財務省と日系企業の対話会合が10月4日、ハノイ市内の税関総局で初めて開催された。会合には在ベトナムの日系企業、財務省傘下の税務総局や税関総局の関係者ら200人以上が参加。税務や税関に関して、ベトナム政府の最近の政策が紹介されるとともに、日系企業が直面している課題を、財務省側に直接訴える機会となった。

日本側の代表として登壇した梅田邦夫駐ベトナム大使は「この会合はディン・ティエン・ズン財務相から提案を受けたもので、財務省と日本企業が直接対話する初の貴重な機会となった」と謝辞を述べた。一方、公共インフラ工事代金の支払い遅延、経済区の個人所得税優遇取り消し(2019年6月26日記事参照)などの問題が起きたことに対しては、「日本を含むドナーや投資家のベトナムへの信頼が低下したのは事実だ」と懸念を表明。財務省に対して、官民パートナーシップ(PPP)案件の政府保証や外国直接投資案件への優遇措置の継続、問題発生時の明確な説明責任を果たすよう促した。

日系企業からは、各社が直面する税務や税関関連の課題について、20項目を超える改善要望が挙がった。例えば、投資優遇措置や付加価値税(VAT)還付を規定した法令施行前に納付した当該税の返納を求める複数の指摘があったが、財務省側からは納付時点の法令に従うしかなく、返納はできないとの見解が示された。その場で進展がみられた案件は限られたが、ベトナム側の代表として出席したブー・ティ・マイ財務副大臣らは、問題発生時の不服申し立て方法を助言するなど、改善に向けて取り組む姿勢を示す場面もあった。

ベトナム進出日系企業を対象としたジェトロの調査(2019年4月26日付地域・分析レポート参照)では、ベトナムのビジネス環境上のリスクとして、法制度の未整備や不透明な運用、税制や税務手続きの煩雑さが上位を占めており、今後の改善が期待されている。マイ財務副大臣は会合の最後に、「今後も問題が発生した際は、ベトナム日本商工会議所などを通じて、もしくは直接、財務省、税務総局、税関総局に問い合わせてほしい」と、日系企業への協力姿勢を示した。

写真 対話会合で登壇する日本とベトナムの代表者(ジェトロ撮影)

対話会合で登壇する日本とベトナムの代表者(ジェトロ撮影)

(庄浩充)

(ベトナム)

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