欧州進出日系企業で進む、合意なき離脱への対応準備

(欧州、英国)

欧州ロシアCIS課

2019年10月30日

ジェトロは10月30日、「英国のEU離脱に関する欧州進出日系企業への影響」に関するアンケート調査結果(回答企業数:842社、調査期間:9月10日~10月8日)を発表した。

欧州に進出している日系企業の(1)英国のEU離脱の事業への影響、(2)英国のEU離脱に備えた拠点の移転および調達先の変更、(3)英国の合意なきEU離脱に備えた対応策(コンティンジェンシー・プラン)の準備状況を取りまとめた。

「英国のEU離脱(ブレグジット」によるこれまでの事業への影響」で、「マイナスの影響」があると回答した企業は、欧州全体では31.0%で、前年度の調査から14.9ポイント上昇した。国別にみると、「マイナスの影響」は在英日系企業で54.0%と最も高く、前年度の調査の25.3%から28.7ポイント上昇した。具体的な影響としては、物流・税関の混乱などを想定した「在庫積み増しにかかる費用」が在英日系企業、英国を除く在EU日系企業の双方から指摘された。

「ブレグジットによる今後の事業への影響」では、欧州全体では「マイナスの影響」が37.7%と、「これまでの影響」と比較してさらに高い数値になった。他方、「わからない」と回答する企業の割合が36.9%と4割弱を占め、先行きを見通すことができない状況が続いている。

英国のEU離脱に備え、欧州拠点の機能移転(一部移転を含む)および調達先の変更を実施、あるいは決定と回答した企業に、具体的な機能について聞いたところ、「統括」(13社)機能が最大で、「販売」(7社)が続いた。移転先として、「統括」では金融・保険を中心にドイツ、オランダ、ルクセンブルク、「販売」ではドイツ、オランダ、イタリア、チェコ、ポーランドが挙がった。調達先については、英国からEU域内のイタリア、スペイン、チェコなどに変更するという回答のほか、アジアから英国へ変更すると答えた企業があった。

「合意なき離脱(ノー・ディール)」に至った場合の対応策の策定状況では、「策定完了」「策定中」「策定予定」までを含めた回答割合は、在英日系企業で前年度の調査から31.4ポイント増の48.9%に上昇し、対応準備が進んでいることが明らかになった。「策定完了」「策定中」「策定予定」と回答した欧州進出日系企業全体の対応策として、最も多く挙げられたのは「在庫の積み増し」(167社)で、次に「物流ルートの変更」(72社)だった。

(田中晋、福井崇泰、山田恭之)

(欧州、英国)

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