欧州議会、ブレグジットめぐる英国新提案に難色
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年10月04日
欧州議会は10月3日のプレスリリースで、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐって英国政府が前日に行った、アイルランド・北アイルランド国境管理の厳格化を避けるバックストップに代わる新提案(2019年10月3日記事参照)について、欧州議会ブレグジット問題対策グループ(BSG)の協議の結果、「EUとアイルランドが必要とする安全策が含まれていない」との見解で一致したと発表した。欧州議会は今後も法的に運用可能な解決先を受け入れる用意はあるとしているが、現時点での新提案の受け入れには難色を示した。
英国新提案の運用可能性を疑問視
BSG座長を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は同日付のツイートで、英国の新提案の「基本的問題点」(2019年10月3日記事参照)として次の3点を挙げ、「前からある、悪い方策の寄せ集め」と批判した。
- (通関手続きの在り方など)詳細が不明で、運用可能性に疑問がある
- アイルランド島全体としての経済の統合を毀損(きそん)する
- 北アイルランド民主統一党(DUP)の判断に左右される
3点目は、英国の新提案のうち、移行期間中と終了後4年ごとに北アイルランド議会に「全島規制区域」に関する同意の機会を設けるとしている点を指すと理解される。
上述のプレスリリースによると、BSGは北アイルランド地域での通関手続きに関する新提案は「施設や管理、チェックについての言及はあるが、それらがどこで、どのように行われるのか具体的な説明がない」ことが問題だという。国境やその周辺で何らかの通関検査が行われる場合、これまでのアイルランド・北アイルランド間の円滑な取引の終了を意味し、アイルランド島全体としての経済の統合を毀損するとともに、北アイルランド地域の和平プロセスにも深刻なリスクをもたらす、とBSGは指摘した。
さらに、新提案が国境管理の運用上の判断の一部を北アイルランド議会に委ねるとする点について、BSGは「(議会の政治情勢次第で)不確実、暫定的、一方的な決断がされかねない」「3年近く開催されていない北アイルランド議会がこうした性質の国際的な条約の責任を負えるか疑問」と懸念を示した。
なお、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は3日、アイルランドと英国の首相とそれぞれ電話協議したことをツイッターで明らかにしたが、アイルランドのレオ・バラッカー首相に対して、「われわれ(EU)はアイルランドとともにある」と述べ、英国のボリス・ジョンソン首相には、「(英国の提案を)受け入れる用意があることに変わりないが、(現状の提案では)納得もできていない」と伝えたという。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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