英国政府がバックストップに代わる新提案を発表

(英国、EU)

ロンドン発

2019年10月03日

英国政府は10月2日、英国のEU離脱(ブレグジット)における北アイルランドに関わる取り決め「バックストップ」の代替案を欧州委員会に対して正式に提案する書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。ボリス・ジョンソン首相は書簡の中で、EUと英国の将来関係の懸け橋となるはずのバックストップは、英国をEUの関税枠組みにとどめ、多分野においてEU法に合致させるものだが、英国はこれを望んでおらず、英国が自国に独立的に主権を行使できる自由貿易協定(FTA)を基盤に、将来関係を構築すべきだとした。

英国は同日、5要素から成る新たな提案を欧州委のブレグジットに関するタスクフォースに送付した(表参照)。同提案は、ベルファスト合意の順守や共通旅行区域(CTA)などの英国・アイルランドの協力関係については、これまで同様に継続するとしている。一方で、移行期間終了後、EUとの将来関係が結ばれていない場合には、バックストップではなく、アイルランド島に「全島規制区域(ゾーン)」を適用することを提案している。全島規制区域では北アイルランドにもEUの規制が適用され、農産品を含む全ての物品に対して、北アイルランド・アイルランド間で国境検査を行わないとしている。また、全島規制区域の適用については、移行期間中と、終了後4年ごとに北アイルランドの自治政府と議会の合意が必要としており、合意がない場合は適用終了となる。また、本取り決めにおいて、北アイルランドはあくまでEUではなく、英国の関税領域となる。

北アイルランドとアイルランドの関税領域が別になることについては、通関手続きを国境での実施から分散化することが必要とした。手続きを電子化し、最小限必要な物理的検査については、貿易を行う事業者の構内、あるいはサプライチェーンに関するその他のポイントで行うことを提案している。また、これらの実現のため、英国とアイルランドが協力して、既存の通関ルールを改善・簡素化するための解決策を模索することを提案している。

表 政府の主張する新提案の5つの要素

本提案に関しては、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長が、交渉の前進を歓迎しつつも、課題が残るとして、内容の精査を進める構えだ(2019年10月3日記事参照)。英国の最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は「テレーザ・メイ前首相の案よりも悪化している」と批判。また、保守党に閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)のアーリーン・フォスター党首は、本提案を支持することを表明している。また、英国政府は10月8日から14日まで議会を再度休会する意向であることをBBCが報じている。

(木下裕之)

(英国、EU)

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