ロシアでも郵政民営化、ロシア郵便を株式会社に改組へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年10月03日

ロシア連邦政府は9月24日、ロシア郵便の株式会社への改組に関する連邦政府指示に署名したと発表した。

今回の連邦政府指示は、「株式会社ロシア郵便」の定款に関する連邦政府指示(2019年9月20日付第2131-r号)と、連邦国家単一企業「ロシア郵便」からの資産移管に関する連邦政府指示(2019年9月20日付第2132-r号)の2つ。2018年6月29日付連邦法第171号「『連邦国家単一企業ロシア郵便』の再編成の特殊性、『株式会社ロシア郵便』の活動の基盤、個々の連邦法の修正」に基づき、デジタル発展・通信・マスコミ省が策定した。

定款によると、新会社の資本金は157億5,319万9,000ルーブル(約268億円、1ルーブル=約1.7円)で、発行される普通株式は1,575万3,199株(1株1,000ルーブル)。事業活動分野としては、通常の郵便・物流とそれに付随する活動のほか、金融業、保険代理店業、小売り・卸売り・電子商取引(EC)、国・地方自治体のサービス提供を行う多機能センター業務などの71分野が記載されている。

メドベージェフ首相が9月24日に行ったスピーチによると、新会社の株式は100%国家が所有することになるとし、国による管理体制に変更はないようだ。新会社への資産の移転に関しては、巨大な物流センターや郵便ネットワークなどを含む5万2,000件の施設、4万6,000件の土地など含まれるが、資産に関する権利手続きは2020年10月1日までに完了しなければならないとしている。

首相はまた、株式会社化後もロシア郵便の社会的意義や役割は以前と変わらない一方で、企業として国家による金融支援なしに十分に機能する組織への変更を遂げること、デジタル技術を駆使した情報・輸送サービス市場でより重要な役割を担うことなどを課題として掲げ、新会社の企業運営には最新のものを取り入れ、高い成果達成に向け、より効率的な作業を行わなくてはならないと注文を付けた。

ロシア郵便は近年、日本郵便との関係を強化している。2016年12月に両社は日ロ間の郵便輸送の効率化、日本の郵便輸送技術のベストプラクティスのロシア郵便への共有、越境EC事業の調査研究に関する協力覚書を締結。2018年5月には、郵便輸送の高度化、物販・ECでの協力、郵便オペレーションおよびサービスのベストプラクティスの共有などの包括覚書に署名した。日本の民間企業との連携も強化しており、北海道総合商事は2018年2月にロシア全土の郵便局で日本製品の小売り販売を行う業務提携を発表。同年9月には、同社ロシア子会社のペガスHCがウラジオストク中央郵便局の一部を改装し、日本製品の販売スペースを設置した。さらに、「株式会社いつも.」と、ロシアでの日本製品の販売に向けた越境ECサイトの立ち上げに関する覚書を9月に締結している(2019年9月17日記事参照)。これらは今回の株式会社化を踏まえた、収益源拡大に向けた国際郵便・物流事業強化への布石とみられる。

(齋藤寛)

(ロシア)

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