2020年政府予算案を発表、税制改革を推進
(スウェーデン)
ロンドン発
2019年10月01日
スウェーデンのマグダレーナ・アンデション財務相は9月18日、「より強力な社会のための改革」と銘打った2020年政府予算法案を国会に提出した。社会民主労働党および環境党の与党2党は、中央党および自由党の2党の閣外協力を得ており(2019年1月23日記事参照)、社会民主労働党にとっては「富裕税」の廃止など、不本意な妥協も余儀なくされた予算案となった。
雇用拡大・福祉充実・環境などのために税制改革
予算案は、歳入が1兆1,160億クローナ(約12兆2,760億円、1クローナ=約11円)、歳出が1兆69億クローナの黒字予算。主な歳出の内訳は以下のとおり。
- 地方自治体への一般補助金:1,284億クローナ
- 家族政策:1,014億クローナ
- 疾病・障害者補助:957億クローナ
- 医療介護・社会ケア:842億クローナ
- 教育・研究:833億クローナ
- 労働市場・労働環境:772億クローナ
- 国防:648億クローナ
- 交通・通信:613億クローナ
- 司法:517億クローナ
- 国際援助:460億クローナ
政府は、雇用拡大、福祉の充実、環境面での目標達成のために、以下の各種税制改革を進めるとしている。
- 高所得者に課せられる「富裕税」廃止
- 65歳以上の所得税減税
- 過疎地域居住者対象の減税導入
- 起業や雇用関連を対象とした減税
- 失業者を雇用する際の雇用主対象減税
- 研究開発費対象の減税
- 金融分野対象税の導入(2022年から導入)
- 廃棄物燃焼税の導入
- プラスチック袋税の導入
スウェーデン経済は緩やかに減速
政府の経済予測では、スウェーデン経済は今後、徐々に減速するとしている。2019年と2020年のGDP成長率をそれぞれ1.4%と見込む(表参照)。減少傾向にあった失業率は、今後わずかな上昇を見込むものの、労働市場は引き続き好調な見通し。他方、英国のEU離脱や米中の貿易摩擦などにより、下振れリスクも指摘されている。
しかし、アンデション財務相は「スウェーデン経済は世界や国内の不確実性に対抗する備えがある。国家財政は黒字で、GDP比債務残高は1970年代後半以来の低水準だ。また、失業率も低水準となっている。われわれは責任ある財政政策を行ってきており、改革をさらに推し進める用意がある」と述べた。
(三瓶恵子)
(スウェーデン)
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