気候変動市民評議会が初会合、市民による法規制案策定に向け協議を開始

(フランス)

パリ発

2019年10月16日

抽選により選ばれた150人の市民で構成される気候変動市民評議会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます10月4~6日、フランスのパリで開催された。同評議会は2018年11月に発生した「黄色いベスト」による抗議活動と2019年1~3月に行われた国民協議の結果を踏まえ、マクロン大統領が2019年4月に示した2020年までの政策運営の新方針外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2019年5月9日記事参照)の中で、同評議会の開催を明示していた。

同方針において、マクロン大統領は気候変動対策について、エネルギー効率の高い給湯器や乗用車への買い替え補助金など既に複数の支援措置が導入されているものの、一般市民にあまり知られておらず、複雑なこともあり、あまり利用されていないと指摘。新たな試みとして、抽選で選ばれた150人の市民から成る気候変動市民評議会を招集し、同評議会からの提案を導入することにより、一般市民がこうした支援措置を効率よく利用できるよう見直す方針を示していた。

1回目となる本会合の初日には、フィリップ首相が基調講演を行い、「2030年までに、社会的公平を守りながら、温室効果ガスを1990年比で少なくとも40%削減する」ための具体的な政策の提案を求めた。その後のセッションでは、専門家や政策担当者が気候変動問題の現状や政策実施状況などについて説明し、評議員は複数のグループに分かれて協議するなどした。

気候変動市民評議会は、2020年1月までに計6回の会合を開き、2020年1月25~26日に具体的な法規制案をまとめ、政府に提出するとしている。マクロン大統領は同評議会からの提言をフィルターなしに、上下院における議会での採決または国民投票にかけるか、あるいは行政命令のかたちで直接適用することを公約している。

なお、マクロン政権は2018年12月、燃料価格の高騰、炭素税引き上げによる購買力低下に抗議して始まった「黄色いベスト」運動を受け、2019年1月に予定されていた炭素税の引き上げを見送った(2018月12月5日記事参照)。しかし、会計検査院の関連機関である国民負担(強制徴収金)評議会は9月18日、環境税制に関する報告書の中で、パリ協定の実現に向け政府に炭素税の引き上げ再開を求める一方、国民の承認を得るため、税収の使途に関わる透明性の確保や、低所得者層の購買力補填(ほてん)措置などが必要になるとしていた。

(山崎あき)

(フランス)

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