米GMのストライキ4週目、交渉進展せず、長期化の背景にUAW役員の汚職捜査も

(米国)

シカゴ発

2019年10月09日

全米自動車労働組合(UAW)による、ゼネラルモーターズ(GM)の全米ストライキ(注)は4週目に入ったものの、解決の糸口は見えてこない。全米4万9,000人の組合員はプラカードを掲げて抗議を続けており、GMの株価はストライキ前の9月13日から1割以上値下がりした。オートモーティブニュースは、カナダの総合自動車部品サプライヤー大手リナマーではストライキの影響で1日当たり75万ドルの利益が失われていると報じている。また、自動車産業の調査機関Center for Automotive Research(CAR)のクリスティン・ジゼック産業・労働・経済担当バイスプレジデントは、事態の終結は10月後半になる見込みが高いと言及した。

写真 UAWストライキの様子(ジェトロ撮影)

UAWストライキの様子(ジェトロ撮影)

UAWは10月6日、組合員に向けて「状況は悪化した。GMの提案はわれわれに拒否された前回の案からほとんど変更がなく、今回の契約期間の雇用保証に全くなっていない」と伝えた。近年、自動車メーカーは自動運転やコネクテッドといった、いわゆるCASE(C:相互通信、A:自動運転、S:シェアリング、E:電動化)への投資を進めているが、直ちに利益を生む事業とはならないため、メーカーの財務を圧迫している。また、2019年の世界の新車販売台数は2年連続の前年割れとなる見込みで、世界経済も減速傾向にある。ロイターの分析では、GMの労働生産性は2009年の破産からの回復以降、低下を続けている。このため、自動車メーカーは生産性を高めたいと考えており、他方でUAWとしては労働者への利益配分を増加させ、正規雇用と非正規雇用の賃金格差を縮めたいという事情が背景にある。

さらに、スト強行と長期化の背景として、UAW役員による汚職問題を指摘する声も聞かれる。UAW内部ではストライキ以前から、役員による組合費に関する汚職事件の捜査が進んでいる。デトロイト・ニュースなどの報道によると、9月には組合役員が家宅捜索を受けたほか、ミズーリ州からカリフォルニア州までの17州を率いる地域ディレクターが横領やマネーロンダリングの疑いで起訴され、10月4日に休職処分となったという。

(注)UAWのストライキは9月15日から始まった(2019年9月17日記事参照)。

(河内章)

(米国)

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