米中貿易摩擦の恩恵を受けず、1~7月の衣料品輸出は減少
(フィリピン)
マニラ発
2019年10月18日
衣料品輸出業者連盟(CONWEP)は10月8日、フィリピンの衣料品製造業が米中貿易摩擦による恩恵を受けておらず、むしろ2019年1月から7月までの衣料品の輸出は15%減少したと発表した。
CONWEPのマルテス・アゴンシロ会長はマニラで開催されたフォーラムにおいて、「中国に寄せられていた発注が、米中貿易摩擦の影響でフィリピンに寄せられるという予測から、2019年の輸出額は前年比で15%から20%の増加になると予想していたが、実際は15%減少している」と説明した(注)。
アゴンシロ会長は減少の理由として、米中貿易摩擦の恩恵はフィリピンよりも衣料品製造業のワーカー賃金が低いミャンマー、カンボジア、ベトナムが享受している点、そしてCITIRA法案が可決した場合に衣料品製造業の将来性が不安視されている点を挙げた(CITIRA法案の概要については2019年10月2日付地域・分析レポート参照)。
CONWEPの資料によると、フィリピンの衣料品製造業のワーカー賃金は月給190~274ドルであるのに対して、ミャンマー、カンボジア、ベトナムにおける衣料品製造業のワーカー賃金はそれぞれ85~95ドル、147~170ドル、146~167ドルと低く、中国向けに発注していたアパレル企業はフィリピンではなく、ミャンマー、カンボジア、ベトナムといった国に発注先を変更したのではないかと説明した。一方で、ジェトロが実施した「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、日系製造業の作業員の平均賃金は、フィリピンが220ドル、ミャンマーが162ドル、カンボジアが201ドル、ベトナムが227ドルだった。
アゴンシロ会長は、CITIRA法案が可決した場合、税制優遇制度の見直しで企業の収益性や競争力が失われ、CONWEPの加盟企業が雇用する140万人のうち、37万5,000人が職を失う可能性があると主張した(2019年10月4日記事参照)。
(注)グローバル・トレード・アトラスによると、2019年1~7月のフィリピンの衣料品(HSコード63類)の世界向け輸出は4,947万4,000ドルで、前年同期比で4.8%減となっている。
(坂田和仁)
(フィリピン)
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