米制裁のトルコ経済への影響、当面は限定的か

(トルコ)

イスタンブール発

2019年10月17日

トルコのエルドアン大統領は、欧米などからのシリア越境作戦停止要求を退け、目的を達成するまで作戦は継続すると強調した。また市場は、欧米からの制裁措置に関して、その影響は限定的とみている。

トルコ軍が10月9日に、シリア北部でトルコ国境沿いのクルド勢力の排除と、安全地帯の構築を目的に「平和の泉」作戦と称し、シリア北部に侵攻したことで、世界各国から批判の声が上がっている。米国も14日、停戦を呼び掛けると同時に、鉄鋼追加関税率を25%から50%へ引き上げるなどの制裁措置を発表した(2019年10月16日記事参照)。

米国の制裁措置に関して、トルコ鉄鋼輸出業者協会のナームク・エキンジ会長は「トルコから米国への鉄鋼輸出は約15億ドルにすぎず、トルコの鉄鋼業界にとって極めて大きな問題というわけではない。既に1年前にも米国は同じ措置を取っており、代替市場としてアジアや中東向けの輸出増を行った。トルコの鉄鋼業界に対する今回の制裁の影響は限定的だ」とのコメントを出すなど楽観的で、米国からも「優しい制裁」とする声もある(「ドイチェ・ヴェレ」トルコ語サイト10月15日)。

一方、米国検察当局が10月16日に、2016年から続いているトルコ国営銀行ハルクバンクによる、イランに対する米制裁を回避する数十億ドル規模の違反疑惑で、再び同行を起訴するなど、トルコ側の対応によっては米国側の反発が強くなる可能性もある。

欧州も米国と同様に停戦を求め、フランス、ドイツ、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンはそれぞれトルコへの武器輸出を停止すると発表したが、EUの対トルコ制裁への足並みはそろっていない。ただ、9月末にトルコ法人を立ち上げた(2019年10月11日記事参照)ばかりのフォルクスワーゲン(VW)が、トルコへの新工場建設計画(13億ユーロ規模)の決定を延期するなど、トルコ軍によるシリア北部での軍事作戦に伴う経済への打撃が懸念されている。

(エライ・バシュ)

(トルコ)

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