トランプ米大統領、シリアへの軍事介入を理由に対トルコ制裁を発動、鉄鋼輸入追加関税は50%に再度引き上げ

(米国、トルコ、シリア)

ニューヨーク発

2019年10月16日

トランプ米国大統領は10月14日、対トルコ制裁に関する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。トルコ政府による、シリア北東部のクルド人勢力を標的とした軍事行動を受けての措置となる。加えて、1962年通商拡大法232条に基づいて発動している、トルコ製の鉄鋼輸入に対する追加関税率を、現行の25%から50%へ引き上げるとした。

財務省がトルコの特別指定国民を制裁対象リストに追加

米国財務省は大統領令の発表を受けて同日、トルコのエネルギー・天然資源省、国防省の2省と、関連する3人の閣僚を、制裁対象である特別指定国民(SDN)に追加外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(表参照)。スティーブン・ムニューシン財務長官はプレスリリースで、「米国は、無実の市民を危険にさらし、(シリア北東部)地域を不安定にさせるトルコ軍による過激化する暴力について、同政府に責任を負わせる」と述べている。

表 トルコの特別指定国民の制裁追加の概要

財務省は他方で、一定の取引などについては一般許可(General License)の下で、事業が継続できるとしている。10月14日に発表された一般許可は、(1)一般許可1PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):米国政府機関による公的な事業の継続の許可、(2)一般許可2PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):トルコの国防省、エネルギー・天然資源省との既存の契約を終了させるための30日間の限定猶予、(3)一般許可3PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):世界銀行やIMFほか国連の専門機関がトルコの国防省、エネルギー・天然資源省に関連して行う公的事業の継続の3種類となる。

トルコ製鉄鋼への追加関税率を再び50%に

トランプ大統領は、大統領令で指示した制裁に加えて、トルコからの鉄鋼輸入に対する追加関税率を50%に引き上げるとともに、同国との貿易交渉を停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。鉄鋼への追加関税賦課は1962年通商拡大法232条に基づく輸入制限措置で、米国は2018年3月から、一律25%の追加関税を課している(2018年3月27日記事参照)。トルコに対しては、その後の関係悪化を受けて、同年8月に追加関税率を50%に引き上げていた(2018年8月13日記事参照)。米国は、トルコの追加関税率を2019年5月には再び25%に引き下げた(2019年5月20日記事参照)、同じタイミングでトルコを一般特恵関税制度(GSP)の対象から除外していた。

トランプ大統領は声明の中で、「トルコの指導者が危険で破壊的な道を進み続けるのであれば、私はトルコの経済をすぐに破壊するための準備が完全に整っている」と述べ、場合によっては追加手段を取る構えをみせている。米政権は事態打開に向けて、マイク・ペンス副大統領をトルコに派遣するとしている。

(磯部真一)

(米国、トルコ、シリア)

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