ロシア、カスピ海の法的地位に関する条約を批准

(ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)

欧州ロシアCIS課

2019年10月02日

ロシアのプーチン大統領は10月1日、「カスピ海の法的地位に関する条約」を批准する連邦法(2019年10月1日付第329-FZ号)に署名した。本条約への批准は、トルクメニスタン、カザフスタン、アゼルバイジャンに続き、4カ国目。

本条約は、2018年8月12日にカザフスタンのアクタウで開催された第5回カスピ海沿岸諸国首脳会議で署名された(2019年8月13日記事参照)。条約締約国によるカスピ海での主権、主権と排他的権利などの行使を規定するもので、水域、海底、地下、天然資源、海上空域を含むカスピ海の利用に関する締約国の権利と義務を定義している(2018年7月3日記事参照)。

本条約の発効のカギを握るのが、唯一の未批准国であるイランだ。イランのモハマド・ジャバッド・ザリフ外相が、7月29日にイラン議会(マジレス)に対して行った説明では、「1979年のイラン革命以降、過去40年間にわたり、イランは領土問題において1インチたりとも譲歩したことがない」と述べ、イランは、領土・領海に決して妥協しないことを強調した。その上で、今回の条約批准については、議会の評決に従うとした(イランの通信社「メヘル通信」7月29日)。

カスピ海は1920年代から1991年まで、イランと旧ソ連の2カ国が管轄しており、非公式に50%ずつの所有にしていた経緯があり、これに対して、ソ連崩壊後に独立した、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンが抗議していた(カスピ海地域をめぐる情報・分析ポータルサイト「カスピ海通報」3月21日)。これを、5カ国による20%ずつでの均等割りとするか、各国の海岸線の長さに応じて配分するのか(この場合、イランの持ち分は10%超)などの長期にわたる議論を経て、今回の条約では「領海は基線から15カイリ(約28キロ)以内」と規定されている。イランにとっては、いずれにせよ譲歩を迫られることになるため、イラン議会が妥協できるかが焦点となっている(同通信8月1日)。

(齋藤寛)

(ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)

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