アルジェリア発スタートアップ、配車サービスを展開

(アルジェリア)

パリ発

2019年10月17日

アルジェリアの主要都市では地下鉄やトラムの整備が進むが、公共交通機関はいまだ需要に追い付いていない。さらに、タクシーも不足している。このような中、現地発スタートアップのヤッシールとテムテムは、外資大手に先行してライドシェア事業を展開している。

国内ライドシェア市場最大手のヤッシールは、米国シリコンバレーで配車アプリを開発し、2017年9月にアルジェリアで事業を開始した。同社は2019年4月に世界経済フォーラムが発表した「マグレブ・スタートアップ・トップ5社」に選出された実績を持つ。アフリカ市場への展開を見据え、チュニジアとモロッコに進出している。両国では、配車サービスに関連する法規制が曖昧なアルジェリアとは異なり、法規制が厳しいため、タクシー予約サービスに限定して試験運転を実行中だ。ジェトロが同社共同創業者のマハディ・イェットゥー氏にインタビューしたところ、モロッコのカサブランカでは10月15日、チュニジアのチュニスでは11月中旬に、公式発表を経て本格参入する予定だ(10月14日現在)。

一方、同じく地場資本で2018年に設立された競合相手のテムテムは、個人や企業を対象とした配車サービスに加えて、2019年4月にバイクタクシーや宅配サービスを開始した。最大手ヤッシールとの差別化を図る狙いがある。2018年のシードラウンドの130万ドルに続き、2019年9月には同国スタートアップとしては最大規模の400万ドルのシリーズAの資金調達に成功した。同社設立者のカメル・ハッダル氏によると、ルクセンブルク所在のアルジェリア系ベンチャーキャピタルのテル・グループが資本の20%を取得した。テムテムは国内シェアの拡大、さらにアフリカ市場への展開を目指している(ジュヌ・アフリーク10月2日)。

アルジェリアでは、2020年以降に外資出資制限が一部緩和される見込みがあるものの(2019年10月2日記事参照)、外資の出資制限を49%以下に定めた「51/49%規則」が引き続き適用される。また、カード決済や電子決済が普及していないこともあり、米国ウーバー・テクノロジーズや中国滴滴出行(DiDi)などの外資系大手がアルジェリアに進出していないことも、地場スタートアップに商機拡大につながっている。

(ピエリック・グルニエ、渡辺智子)

(アルジェリア)

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