TICAD7併催フォーラム、アフリカにおけるイノベーションを議論

(アフリカ、日本)

中東アフリカ課

2019年09月02日

横浜で8月29日に開催された日本・アフリカビジネスフォーラム(2019年9月2日記事参照)のテーマ別パネルセッションIでは、「アフリカ・イノベーション&スタートアップ」を取り上げた。日本・アフリカの大手ファンド、有望スタートアップ、日本企業から有識者8人が議論した。

冒頭、各パネリストがアフリカでの起業やソリューション(課題解決)事例について紹介した。ビット・ペサ(注1)の最高経営責任者(CEO)エリザベス・ロシエロ氏は、所要時間の長さと煩雑な手続き、為替リスクなど課題が多かった国際送金を同社がデジタル化することで、ソリューションを提供した例を挙げた。コボ360(注2)のCEOオビ・オゾー氏は、トラック運転手とトラック輸送が必要な企業をマッチさせるオンラインサービスはナイジェリアを中心に隣国にも広がっており、大手の多国籍企業を顧客に持っていることを強調した。エノバ・ロボティクス(注3)CEOのアニス・シャバニ氏は工場や空港用のセキュリティーロボットを製造・開発していることを説明した。

アフリカにおけるイノベーションの特徴について、サバンナ・ファンド創業者のムブワナ・アリー氏は「(一部の)アフリカの国々では規制を緩和して実証を促すこともあり、イノベーションが迅速にできる」と、テスト場としての位置付けを示した。また、オゾー氏は自身の経験を踏まえ、「アフリカへの投資はリターン率が高い」と強調した。一方で、ロシエロ氏はリスクがあることにも触れ、不安定な通貨に対応するためのリスク軽減戦略や、現地スタートアップと組む場合には具体的な計画を事前に立てることの重要性も指摘した。ビット・ペサを含む20以上のスタートアップに出資するSOMPOホールディングスのグループCDO(最高デジタル責任者)で執行役常務の楢﨑浩一氏は、「アフリカの真の価値は『レガシーをほとんどもたない真空状態』であること。そのため、日本を技術で飛び越える(リープ)可能性がある」と日本人の参加者に訴えた。

日本企業の参入には現地パートナー探しが肝心

ケニアのエムコパソーラー(注4)に出資する三井物産のプロジェクト開発第二部第二営業室長の古田真崇氏は、情熱を持っている現地パートナーを探り当てることが必要と話した。また、サワリ・ベンチャースのアハメド・エル・アルフィ氏は、スタートアップ投資において起業家に強い意志があるか見極めることが重要と話した。オゾー氏は、小さい投資からでも始めることが大事で、経験を積みながらアフリカの実情を学んでいくことが必要だと訴えた。

モデレーターは日本IBMのデジタル・メイカーズ・ラボのリーダー、嶋田敬一郎氏が務めた。

写真 左から嶋田氏、アリー氏、アルフィ氏、ロシエロ氏、オゾー氏、シャバニ氏、古田氏、楢﨑氏(ジェトロ撮影)

左から嶋田氏、アリー氏、アルフィ氏、ロシエロ氏、オゾー氏、シャバニ氏、古田氏、楢﨑氏(ジェトロ撮影)

(注1、2、4)企業の詳細は、調査レポート「アフリカ・スタートアップ100社」を参照。

(注3)企業の詳細は、調査レポート「チュニジアのスタートアップ最前線」アフリカ・スタートアップ100社」を参照。

(伊尾木智子、山崎有馬)

(アフリカ、日本)

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