欧州委、英国の合意なきEU離脱に向け緊急対策準備を企業に最終要請

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年09月06日

欧州委員会は9月4日、英国のEU離脱(ブレグジット)問題で、EUとの離脱協定が発効していない状態で10月31日に離脱(ノー・ディール)に踏み切るリスクを念頭に、EUの企業や市民に緊急対策の準備を完了するようあらためて呼び掛ける「最終要請」として、「第6次ブレグジット対策準備コミュニケーション(指針)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表した。

欧州化学産業界はEU域内で化学物質の調達ができなくなるリスクを指摘

欧州委は、これまでも緊急対策準備を勧奨(2019年3月26日記事参照)してきたが、英国側が離脱協定案を承認するかは依然として不透明な状況が続いているとの認識を示し、特に英国と取引関係を持つ企業向けに「準備チェック・リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を提示。通関手続きなどの混乱を回避するため、最新の準備状況の詳細を確認することを求めている。

また、欧州委はこれまでの緊急対策を基本的には見直していないとしたが、英国の離脱延期を考慮し、以下については技術的な調整を行うとしている。

  • 貨物・旅客の道路輸送の相互接続性:適用期限を2019年末から2020年7月31日まで延長することを提案
  • 空路による貨物・旅客輸送の相互接続性:適用期限を2020年3月30日から10月24日まで延長することを提案
  • 漁船の相互領海へのアクセス(操業権保障):適用期限を2019年末から2020年内まで延長することを提案(2019年1月24日記事参照
  • 英国によるEU予算活用:英国政府が2020年度EU予算への拠出金を負担することを前提として、英国側が2020年度末までEU予算を活用してEUプロジェクトに参画することを認めることを提案

なお、今回のブレグジット対策準備について、欧州化学工業連盟(Cefic)は9月4日付の声明で、「現時点で英国(化学)企業の48%はREACH規則に基づく化学物質の登録元を(英国法人から)EU域内法人に移管できていない」「欧州化学品庁(ECHA)は企業に離脱日前に登録元の移管作業を開始することを要請していたが、(移管作業が進んでいないという)この状況は、合意なき離脱となった場合、10月31日を過ぎると、700を超える化学物質のEU域内での調達ができなくなるリスクがあることを意味する」と指摘する。Ceficによると、多くの企業が登録元の移管可能性のための準備をしているものの、ブレグジットに関してより確実になる状況を待っているという。Ceficは離脱日以降の化学品の調達可否を顧客である川下産業に周知するための態勢整備が必要だと指摘している。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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