欧州委、ノー・ディールに向けた緊急対策の準備完了を発表

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年03月26日

欧州委員会は3月25日、4月12日の英国の合意のないEUからの離脱(ノー・ディール)の高まる可能性を踏まえ、ノー・ディールに向けたEU側の緊急対策の準備が完了したことを発表した。欧州委は、ノー・ディールに伴う混乱を最小限に抑えるため、これまでに緊急対策に関わる90件の「準備通告」、3件の「コミュニケーション(政策文書)」、19件の「立法提案」を行っている(うち、17件について採択もしくは合意済み、残り2件についても最終審議段階にある)。このうち一部は、欧州議会も3月21日に概要を発表(2019年3月22日記事参照)している。さらに、ノー・ディールに向けた準備についてより詳しく知りたいEU市民のために、EUの24の公用語でEU域内のどこからでも相談可能な無料電話相談窓口を設置したほか、EU市民向けのファクトシートを24言語で3月25日に公表した。

ノー・ディールの場合、英国との間で直ちに通関手続きなどを開始

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長を筆頭に、ノー・ディールは誰も望んでいないが、その可能性を前提に準備は怠らないというのが、EU側の基本姿勢だ。今回の発表でも、欧州委は「ノー・ディールに伴う現実的な結果に目を向けて準備を進めるべき」と企業やEU市民に注意を呼び掛けている。

欧州委によれば、英国議会が3月29日までに離脱協定案を承認しない場合、4月12日をもってノー・ディールのシナリオが現実のものとなる可能性がある。ノー・ディールのシナリオにおいては、英国に対する全てのEU法の適用は移行期間なく停止し、EUは英国を(EU域外の)第三国と見なし、「通関手続き」「関税賦課」「衛生植物検疫措置」「(商品の)適合性検査」などを直ちに開始するとしている。

欧州委は、EU加盟国通関当局がこうした事態への準備に着手していても、国境通関での手続き遅延などのリスクは否定できない、と指摘している。また、EUに渡航する英国市民へのEUの対応も同様で、これまでのEU市民と同等の権利は認められず、空港や港湾での検査も開始され、これに伴う入境の遅延も想定されるという。

なお、緊急対策に関わる準備通告は、各分野を所管する欧州委・総局ごとにまとめられており、特設ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧できる。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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