欧州委、ノー・ディールに伴う水産業に向けた緊急対策案を採択

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年01月24日

欧州委員会は1月23日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、合意なき離脱(ノー・ディール)がEU域内の水産業に与える悪影響を緩和するための緊急対策案を採択した。英国議会が「離脱協定」案および「政治宣言」案を承認できないまま離脱日を迎えるリスクも想定し、欧州委は主要産業ごとに緊急対策の整備(2018年12月21日記事参照)を急いでいる。

英国との互恵主義を掲げ、水産業への打撃軽減を模索

今回の緊急対策として欧州委が提案している法案は、次の2本だ。

  1. EU加盟国の漁業者や水産事業者が、ノー・ディールになることにより休漁を余儀なくされた場合、EU加盟国の漁業に対する財政支援措置を行うための欧州海洋漁業基金(EMFF)の枠組みを活用して、補償を受給できるようにすること。
  2. 「域外漁船の持続可能な管理に関する規則」を改正し、2019年末までの期間、英国漁船のEU領海へのアクセスを認める見返りとして、EU加盟国漁船の英国領海へのアクセス権の保障を英国側から引き出すこと。

前者は、英国がEUとの合意のない状態で離脱に踏み切るノー・ディールのシナリオを念頭に、EU加盟国漁船が突然、英国領海から締め出された場合のEU加盟国の漁業者や水産事業者に対する補償整備を狙いとしている。後者の提案には、英国側が同様の待遇を付与することを前提に、EU領海における英国漁船の操業権の保障を簡易手続きで実現することも含んでいる。後者については、2019年内に限った期間限定の措置と位置付けている。

欧州委は、2019年3月29日までにこれらの法案が施行できるよう、欧州議会およびEU理事会との協議を進めるとしている。

欧州漁業連盟(EUFA)は1月23日付の声明で、「こうした措置が必要となる状況を望まないが、離脱協定の批准をめぐって不透明な状況が続く中においては、重要な提案だ」との認識を明らかにし、欧州委提案への支持を表明した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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