メキシコ湾石油ガス鉱区のリース権販売、米トランプ政権下で続伸

(米国)

ヒューストン発

2019年09月02日

米国内務省の海洋エネルギー管理局(BOEM)は8月21日、同日に行われたメキシコ湾石油ガス鉱区のリース権販売の開札結果を発表した(添付資料参照)。

今回の落札の規模は、面積が約83万5,000エーカー(約3,380平方キロメートル)、総額1億5,940万ドル、応札数は165。2018年8月の販売時は約80万1,300エーカー、落札総額1億7,800万ドル、応札数171であり、総額と応札数では及ばなかったものの、年間の落札総額は2019年3月の販売と合わせて4億370万ドルとなり、2018年の総額3億280万ドルを上回り、2015年以降最大の落札総額になった。

2018年8月の開札時には、WTI原油価格が1バレル当たり65.07ドル、直前の2カ月も65~77ドルと高水準で推移していたが、今回は開札時のWTI原油価格が55.65ドル、開札直前2カ月も50~60ドルと低水準だった。さらに、景気後退への懸念や、小規模の石油ガス開発事業者の倒産も増加傾向にあり(2019年8月21日記事参照)、リース権販売にとってはマイナス要因が多い状況だった。

一方、プラス要因としては、トランプ大統領が2017年4月28日に打ち出したアメリカ・ファースト海洋エネルギー戦略(大統領令13795)の下で、2019年5月15日に内務省安全環境執行局(BSEE)が発表した暴噴防止装置(BOP)の規制緩和(注1)などの合理化や、2018年の法人税率引き下げなどが挙げられる。

さらに、最近のメキシコ湾海洋石油開発・生産については、シェルなどのオイルメジャーがWTI原油価格で1バレル当たり35ドル台を損益分岐価格と設定しており(2019年8月8日記事参照)、サブシー・タイバック(注2)などの技術進歩に伴う費用削減による競争力確保も、海洋石油開発・生産への弾みとなっているとみられる。

(注1)暴噴防止装置(BOP)の動作不良が被害拡大の一因となった2010年のメキシコ湾原油流出事故を受けて、掘削中などに海中の油井坑口に取り付けられるBOPの圧力試験頻度が規制強化された。BSEEは5月、状態監視ツールで常時モニターされた場合などには、試験頻度を14日ごとから21日ごとに緩和する合理化を行った。

(注2)石油生産に新たな浮体構造物を用いず、海底の油井口から海底パイプラインをつなぐ方式。

(中川直人)

(米国)

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