主要閣僚ら、保守党大会で10月末のEU離脱を相次ぎ明言

(英国、EU)

ロンドン発

2019年09月30日

10月2日まで4日間にわたり開催される与党・保守党の党大会が9月29日、英国中部マンチェスターで始まった。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる与野党の攻防が激しさを増す中、登壇した閣僚らは相次いで10月末の離脱を明言。「ブレグジットを成し遂げよう」を大会スローガンに掲げ、総選挙も念頭に野党への対決姿勢を鮮明にした。

大会初日の本会議では、ブレグジットを中心に外交方針などが討議された。ドミニク・ラーブ外相は、合意への努力を続ける一方で、「EUが双方に利益のある合意を拒否するなら、10月31日に言い訳なしで離脱する」と宣言。合意なき離脱(ノー・ディール)を阻止する法律が成立している(2019年9月10日記事参照)にもかかわらず、その可能性を言明した。

政府のノー・ディール対策を指揮するマイケル・ゴーブ・ランカスター公領相は、ボリス・ジョンソン首相の就任後に「ノー・ディールの準備が劇的に進展した」と強調。その一方で、「当然全てのリスクを予見することはできず、幾つかの大混乱を確実に回避できるとは限らない」とも述べたが、「ノー・ディールによる困難は過ぎ去るが、ブレグジットを実現できないことによる民主主義への打撃は長く続く」と続け、2016年の国民投票から3年以上過ぎても、なお離脱を実現できない現状の打破を訴えた。

ただし、ノー・ディールに反対する声もある。党大会の併催行事には、9月3日の採決で野党に同調して除名された21人の元保守党議員(2019年9月5日記事参照)の一部も参加。その一人、アリスター・バート前外務政務次官兼国際開発閣外相はシンクタンク主催のパネル討論で、「ノー・ディールの余波は一過性ではない」と警鐘を鳴らしている。しかし、こうした声は、強行離脱を支持する声に比べて小さい。政府不信任により、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首を暫定首相に据えようという企てに、一部の保守党議員や元同党議員が同調することについて、ラーブ外相は「歴史が絶対に許さないだろう」と強く牽制している。

例年、保守党など主要政党の党大会の期間は、議会が休会となる。しかし今回は、政府の議会閉会決定に議会が強く反発、最高裁判所の判決を受けて、議会は再開された(2019年9月26日記事参照)。その後あらためて政府が求めた9月30日から10月2日までの3日間の休会は、9月26日に反対多数で拒絶されている。このため一部議員は、ロンドンとマンチェスターを行き来する必要に迫られるなど、波乱の党大会になっている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

ビジネス短信 c65f5ef49d88e979