英議会が再開、ブレグジットめぐり首相と野党が全面対決

(英国)

ロンドン発

2019年09月26日

英国政府による約5週間の議会休会を違法とする最高裁判所の判断(2019年9月25日記事参照)を受け、議会が9月25日に再開された。昼前に始まった下院での討議は深夜まで12時間近く続き、その半分以上が今回の議会閉会や英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる議論に費やされた。

国連総会出席のためニューヨークを訪問していたボリス・ジョンソン首相は、最高裁の判断を受けて外遊日程を短縮。25日朝に帰国し、夕方から議会答弁に臨んだ。首相は議会閉会について、「歴代首相と全く同じ手続きを踏み、女王演説(とそれに先立つ議会休会)の裁可を求めたにすぎない」と正当性を強調。最高裁の判断については、「司法を軽視する意図はみじんもないが、国を挙げての議論のただ中で、本質的に政治に関する問題について裁判所が判断をするのは誤り」と明言し、野党が要求する辞任や謝罪の考えはないことを示した。

首相はさらに、議会がブレグジットを阻止していると野党を激しく攻撃。すぐにも政府不信任動議を提出するよう迫り、野党を挑発した。EUとの合意がまとまらない場合などに首相にEUへの離脱延期要請を義務付ける法律(2019年9月10日記事参照)について、首相は繰り返し「降伏の法律」と表現し、法に従い延期を要請するかをただした野党議員の質問には、一言「ノー」と答え、対決姿勢をあらわにした。首相の答弁は3時間に及んだ。

最大野党・労働党の議員らは南部ブライトンで25日昼過ぎまで開催していた党大会(2019年9月24日記事参照)の予定を切り上げ、議会での討議に参加した。24日夕に党大会で演説したジェレミー・コービン党首は、ジョンソン首相に辞任を求めるとともに、「この危機を解消できるのは総選挙だけだ。合意なき離脱(ノー・ディール)の恐れが回避され次第、すぐに選挙に臨む」と主張。25日の議会でも、離脱延期を確定させてから総選挙に臨む考えを改めて示し、首相の挑発を退けた。他の野党も、ノー・ディール回避が確定しないうちの議会解散・総選挙には応じない姿勢で一致しており、首相の打ち手はさらに狭まっている。

討議では、ジョンソン首相ら保守党議員が繰り返す言葉遣いを問題視する発言が野党議員から相次ぎ、議場は荒れた。BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は「これまで見てきた議会の中で最も激烈で狂気じみた部類のひとつ」とツイート。混乱は収まる兆しがない。

(宮崎拓)

(英国)

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