2020年の予算法案を国会に提出、徴税効率強化で歳入増を狙う

(メキシコ)

メキシコ発

2019年09月10日

大蔵公債省は9月9日、メキシコの2020年歳入法案と歳出計画を国会に提出した。プライマリー収支はGDP比0.7%の黒字、債務残高のGDP比も2019年と同水準の45.6%に抑えるとし、景気が低迷する中でも規律ある財政運営を重視する。歳入は前年予算比で0.4%増だが、2019年の年間歳入見込み額と比較すると0.0%増と横ばい。歳出は前年予算比で0.8%増、2019年の見込み額と比較すると0.9%増としており、ほぼ2019年度と同水準だ。

予算策定の前提となる「経済政策一般基準」によると、2020年のGDP経済成長率は2.0%としている。民間部門の成長率見通し(2019年9月2日発表)は1.39%となっており、かなり楽観的な見通しといえる。2021~2025年の中期見通し(表参照)でも同期間の成長率平均を2.6%としており、民間部門(今後10年の平均で2.3%)よりも楽観的だ。ただし、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の公約である4.0%(政権期間中の平均)と比べると、現実的な数字といえる。エコノミストの多くは、今回のGDP成長率と歳入の前提となる原油生産量の見通しが楽観的過ぎるとコメントしている。しかし、アルトゥーロ・エレーラ大蔵公債相は、(1)2019年の低い経済活動水準が伸び率のベースとなっていること、(2)現政権下の重点福祉政策が貧困層の消費を活性化させること、(3)米中貿易紛争によるサプライチェーン見直しがメキシコの製造業に奏功していること、を楽観的な見通しの根拠とし、原油生産量については、既に生産の落ち込みが止まっており、今後、生産コストの低い浅海などの油田に投資を集中させることで、生産量が増加するとみている。

表 メキシコのマクロ経済指標見通し

歳入目標の達成は徴税効率に依存

2020年の歳入法案には増税策は盛り込まれていないが、徴税強化に向けた制度変更が盛り込まれている。主な内容としては、次のとおり。

  1. 賃貸サービスにおける所得税(ISR)の徴税強化
  2. 人材派遣サービスに関する付加価値税(IVA)の源泉納税
  3. デジタルプラットフォームを活用したビジネスへの課税強化
  4. ダイレクト販売・カタログ販売業従事者のISR源泉徴収

2.は、進出日系企業にも関連する内容だが、人材派遣サービスを利用した企業は今後、サービス会社にIVAを支払うのではなく、源泉申告して国税庁に直接支払うことになる。3.は、既に輸送・宅配業者に対する源泉徴収が開始されているが(2019年5月24日記事参照)、今後はネットフリックス(Netflix)、スポティファイ(Spotify)、アップル(Apple)など、インターネットを介したサービスの販売・輸入にもIVAが課税されることとなる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 c51a3df9f0f1ccfb