ゼレンスキー政権が新内閣を組閣、首相に35歳のホンチャルク氏

(ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2019年09月03日

7月に実施されたウクライナ最高会議(議会、一院制)選挙(2019年7月23日記事参照)後、初めての議会が8月29日に開催され、新内閣が承認された。閣僚の顔ぶれは添付資料のとおり。過半数が40歳以下で構成されている。

首相には、オレクシイ・ホンチャルク氏が就任した。35歳でウクライナ史上、最も若い首相だ。同氏は「より良い規制発出オフィス(Better Regulation Delivery Office <BRDO>)」(注)代表、大統領府副長官(経済担当)として、ビジネス環境改善に向けた制度簡素化に従事した経験を有する。副首相ポストは6人から2人に削減され、欧州大西洋統合政策担当には、外交官で欧州議会ウクライナ常駐代表のドミトロ・クレバ氏が就任。IT起業家で前大統領府補佐官(IT担当)のミハイロ・フェドロフ氏はデジタル転換相を兼任する。

ホンチャルク氏は首相選出に伴う演説で、最重要課題は年間の経済成長率を最低5%に引き上げることであり、そのためには、金利の引き下げが重要だと指摘。また、経済変革の第一歩は人事であり、全ての国家機関の活動を評価し、非効率な指導者の解雇を計画していると述べた。さらに、2023年までの欧州エネルギー市場との統合に向けまい進しなければならないと語った(ロシア主要経済紙「ベドモスチ」8月29日)。

省庁再編も行われた。経済発展商務省と農業政策・食糧省、エネルギー・石炭産業省と環境・天然資源省、文化省と青年・スポーツ省が合併。それぞれ、経済発展商務・農業省、エネルギー・環境保護省、文化・青年・スポーツ省となった。情報政策省はデジタル転換省に名称変更された。

今回の閣僚人選については批判の声が挙がっている。キエフの政治評論家アレクセイ・クルパス氏は「ホンチャルク首相は若く、フレッシュで積極的だが、経済分野の素養と政治的重みがないため、(国を動かせず)半年後には全てを投げ出すかもしれない」とした。ポストに見合った能力に対する懐疑的な見方もある。アンドリイ・ザゴロドニュク国防相は軍事関係の学歴も従軍経験もなく、フェドロフ副首相兼デジタル転換相については、国家機関での就労経験がないためだ。ロシア主要経済紙「コメルサント」(8月30日)は「今年はポピュリズムと混沌(こんとん)で満たされる」とし、ウクライナ東部紛争の解決に進展がなく、経済成長も実現できなければ、現在、ウクライナ史上最高の支持率を得ているゼレンスキー大統領の支持低下が始まると評している。

(注)BRDOとは、ウクライナにおける効率的な規制整備と自由経済の促進に向けて設立され、EUによる資金支援を受けている独立系規制政策諮問機関。

(齋藤寛)

(ウクライナ)

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