米小売業の上半期の破産申請数・店舗閉鎖数が増加

(米国)

ニューヨーク発

2019年09月30日

米国会計事務所BDO(Binder Dijker Otte)が9月11日に公表したレポート(BDO Bi-Annual Bankruptcy Update外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2019年上半期の小売業者の破産申請数は14件(表1参照)と、2018年の同時期(13件)を上回っている。特に資産の売却や清算を伴うものが多く、人員削減数も多いとされている。再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・クリスマスによると、1月から7月までの倒産に伴う人員削減は4万2,397人と、2018年(3万637人)の同時期を38%上回り、2009年(5万258人)以来10年ぶりの高水準だが、その多くは小売業によるものとされる。BDOのレポートによると、2018年の年末商戦の不振や税還付の減少などが影響したという。

表1 2019年上半期に破産申請を行った小売事業者

2019年上半期は破産に加えて店舗閉鎖も多くみられた。BDOによると、25以上の店舗を持つ小売業による同期の店舗閉鎖数は7,282店舗と、既に2018年計の6,000店舗弱を上回っている。こうした傾向について、BDOの事業再編・再建部門長であるデイビッド・ベルライナー氏は「小売業自体がなくなるということではなく、小売りの再配置だ」と指摘している(「マーケットウオッチ」9月16日)。2019年上半期の店舗閉鎖数(発表ベース)の内訳をみると、破産申請事業者〔ペイレス・シューソース(2,354店舗)、ジンボリ―(749店舗)など7事業者〕に加えて、存続事業者〔ドレスバーン(661店舗)、ファミリー・ダラー(390店舗)など11事業者〕も多くみられる(表2参照)。特に最近では、オンライン販売の隆盛などを受けて、従来の大型旗艦店がコストに見合った売り上げを生み出しづらくなっている。これらを閉鎖して高額なリース料の支払いを削減する代わりに、主要都市に複数の小規模店舗を展開するなど、多様な販売チャネルによるブランド展開を目指す動きがみられる。例えば、ギャップ、カルバン・クライン、ラルフローレンなどは、こうした店舗網再編の動きを先導しているとみられる。

表2 2019年上半期に店舗の閉鎖を発表した小売各社

BDOのレポートによると、失業率の低さ(2019年9月13日記事参照)や賃金の上昇に示されるように、小売売上高市場は引き続き好調を維持していることなどから、2019年後半の破産申請数の増加ペースは上半期と比べて鈍化するとみられるが、事業継続を目指した店舗閉鎖の動きは続くだろうと指摘している。小売りシンクタンクのコアサイト・リサーチによると、2019年末までに1万2,000件の店舗閉鎖につながる可能性があるとされている。

(樫葉さくら)

(米国)

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