モザンビークの非開示債務問題、前財務相の処遇は不透明のまま

(モザンビーク、南アフリカ共和国、米国)

マプト発

2019年08月02日

南アフリカ共和国のヨハネスブルク高裁は8月13日、モザンビークの非開示債務問題に関わった疑いで拘束していたモザンビークのマニュエル・チャン前財務相に対する証人喚問を実施する。米国の国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が7月19日に報じた。米国とモザンビークは前財務相の引き渡しを要求していたが、南ア政府はその決定を同高裁に委ねたかたちだ。

南アのマイケル・マスダ前法務・矯正サービス相は5月16日、前財務相のモザンビークへの引き渡しを決定していた。しかし、5月29日に行われた南アの内閣改造でマスダ氏に代わり就任したロナルド・ラモラ大臣は7月12日、チャン前財務相は国会議員免責特権によりモザンビークでの逮捕、起訴を免れる可能性があることに懸念を表明し、マスダ氏の決定を再検討する意向を表明した。一方、チャン前財務相は7月19日付で議員辞職届を提出し、モザンビーク国民議会で正式に受理されたことが7月24日に発表された。

米国司法当局は、チャン前財務相を含む5人を非開示債務問題に関連して起訴している。このうち、融資元となった証券会社クレディ・スイスの元職員2人はマネーロンダリングや詐欺に加担したことを認めている。また、モザンビーク国内では、この問題に関わったとして20人が起訴されている(2019年5月1日記事参照)。IMFは一連の起訴について、「責任追及のための重要な動き」とし、モザンビーク政府は民間債権者とも誠実な協議を行っていると評価している。さらに、非開示債務の発覚以来、中断されているモザンビークへの一般財政支援の再開についても、IMFモザンビークのアリ・アイゼン代表は、10月15日に予定されている国政選挙後に財政支援再開のための協議が始まる可能性を示唆している(「オ・パイス」紙6月21日)。IMFがモザンビーク政府の対応に一定の評価を示している中で、チャン前財務相の処遇、責任追及の長期化を示唆する今回の発表は、IMFやドナー国の今後の支援再開の動きに影響を及ぼす可能性があるとみられる。

(松永篤)

(モザンビーク、南アフリカ共和国、米国)

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