ペロン党急進派幹部が予備選挙の大勝を受けて協議

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年08月20日

8月11日に行われたアルゼンチン大統領選挙の予備選挙(PASO)で、ペロン党急進派「すべての戦線」のアルベルト・フェルナンデス元首相が大勝した(2019年8月13日記事参照事)が翌12日に、副大統領候補として立候補した前大統領のクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル上院議員(以下、CFK)は、「すべての戦線」幹部と今後の戦略などについて協議した(「エル・リトラル」紙8月12日)。協議では、大統領予備選挙とブエノスアイレス州知事予備選挙で現職の与党候補相手に大差で勝利した要因を分析したほか、10月27日の本選挙に向けて最善を尽くしていくことを確認した。

今回の大統領予備選挙におけるフェルナンデス元首相の大勝は、これまで分裂していた国内最大勢力であるペロン党の穏健派勢力と急進派勢力が団結したことによる影響も大きい。

マクリ大統領は2015年の大統領選挙では、ペロン党を分裂に追い込む戦略で勝利した。当時のペロン党は急進派と穏健派に分裂しており、最終的には同穏健派がマクリ大統領の政党連合「カンビエモス」の支持に回った。今回もマクリ大統領陣営は、ペロン党穏健派を与党連合「変化とともに(「カンビエモス」から名称変更)」に取り込むことを狙った。

しかし、今回の予備選挙では、地方政治に影響力を持つペロン党穏健派の州知事が急進派と協力関係になったため、ペロン党が事実上一本化した。これにより、「すべての戦線」への投票を行いやすくなったとみられる。さらに、急進派でもともとは大統領選挙に立候補すると目されていたCFK氏を副大統領に据え、表舞台に登場する機会を限定させた戦略も功を奏した。

マクリ大統領陣営も、副大統領候補にペロン党穏健派の重鎮であるアンヘル・ピチェット上院院内総務を引き抜いたが、その効果は限定的だった。

なお、2015年の予備選挙と比較すると、当時は上位2政党による得票占有率が80%を超えた州・自治市は皆無だったが、今回は半数の12州に及んだ。また、各党の得票率の伸びを見ると、全国レベルではペロン党急進派が与党連合を7.45ポイント上回った(表参照)。州別の比較でも、24州・自治市のうち18州・自治市でペロン党急進派の方が与党連合より伸び率が高いなど、ペロン党急進派が躍進したことが分かる。

表 大統領予備選挙における2大政党の得票率差(2015年と2019年)

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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