米財務省、中国を「為替操作国」に認定

(米国、中国)

米州課

2019年08月06日

米国財務省は8月5日、1988年包括通商競争力法に基づき、中国を「為替操作国」に認定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。中国人民元の対ドル相場が同日、1ドル=7元台に下落し、2008年5月以来11年ぶりの安値となり、トランプ米大統領は同日、自身のツイッターで「中国は自国の通貨価値を過去最低の水準まで切り下げた。これは『為替操作』だ」と指摘していた。

今回の決定を受けて、スティーブ・ムニューシン財務長官は、IMFとともに、中国による不公正な競争的優位を除去するとしている。

通商競争力法に基づき、財務長官は各国の為替政策の分析を義務付けられており、財務省は、米国の主要貿易相手国が対ドル為替レート操作によって国際収支の調整過程を阻害し、不当な貿易利益を得ていないかなどについて調査・検討を行い、半期(4、10月)ごとに為替政策報告書を作成し、議会に提出している。1988年の同法施行後、中国、台湾、韓国が為替操作国・地域と認定されたことがあるが、1994年7月に中国が認定されて以来、新たに為替操作国と認定された国はなかった。

為替操作国の認定を行うに当たっては、2015年貿易円滑化・貿易執行法に基づき、米国との物品貿易の輸出入総額が400億ドルを超える国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(物品の対米貿易黒字額が年間200億ドル以上)、(2)実質的な経常収支黒字(経常収支黒字額がGDP比2%以上)、(3)持続的で一方的な為替介入(介入総額をGDP比2%以上かつ過去12カ月間のうち6カ月以上の介入実績)という3つの基準が設定されている。為替操作国に認定された場合には、当該国との間で問題解決に向けた行動計画を策定し、当該国が適切な措置を取らない場合には、罰則を科すことができるとしている。

財務省が5月28日に発表した為替財務報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、中国については前回と同様、上記(1)のみが該当していたが、米国の貿易赤字の中で巨大かつ不均衡な割合を占めると米国が判断したことから、引き続き監視対象としていた(2019年5月31日記事参照)。また、同報告書では、中国には外国為替市場での長期にわたる大規模な介入を通じて、人民元の過小評価を促進してきた長い歴史があり、人民元は対ドルで2018年に8%下落したと警戒感を示していた。

今回の財務省の声明によると、中国は最近、かなりの外貨準備高を維持しながらも、通貨を切り下げるための具体的な措置を講じており、「中国の通貨切り下げの目的が国際貿易における不公正な競争上の優位性を獲得することが確認された」としている。また、中国の行動様式は、G20首脳会議での通貨の競争的な切り下げを回避する公約にも違反しており、財務省は、中国がG20の公約を順守することを最重要視するとともに、中国に対して為替レートと外貨準備管理の運用と目標の透明性を高めるよう要請し続けるとしている。

(中溝丘)

(米国、中国)

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