トランプ米大統領の対中追加関税リスト4発動表明、多数の業界団体が反発

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年08月06日

トランプ米大統領が8月1日に、3,000億ドル相当の中国原産の輸入品(注)に対して9月1日から10%の追加関税を賦課すると表明したことを受け(2019年8月2日記事参照)、複数の米国の業界団体から反対する声が上がっている。

全米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会長(国際関係担当)は、新たな追加関税は「米国の企業、農家、労働者、消費者に苦痛を負わせ、米国の好調な経済を傷つけるだけだ」と批判外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、「米中両国に対して、新たな追加関税が賦課される前に短期的に(通商協議を)進展させることを再確認し、既存の追加関税が可及的速やかに取り除かれるよう促していく」と表明した。

全米小売業協会(NRF)のシニアバイスプレジデント(政府関係)のデビッド・フレンチ氏は「さらなる追加関税は米国の雇用を脅かし、米国の家庭にとって日用品のコストを増加させるだけだ」と批判外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。さらに、「政権が米国の経済成長を減速させ、投資環境の不確定さを生み出し、投資意欲をそぐ欠陥のある関税戦略をさらに推し進めていることに落胆している」と述べ、これまでに賦課された追加関税も、中国の不公正な貿易慣習を是正するために機能していないとの見解を示した。

全米製造業者協会(NAM)のジェイ・ティモンズ会長兼最高経営責任者(CEO)は、新たに公表された追加関税は製造業従事者やその家族を不安にさせ、「米国の競争力を低下させる」と主張外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。NAMが実施した米国製造業者の景況感調査で、今後の見通しが楽観的と回答した割合が2019年第2四半期(4~6月)は79.8%と、第1四半期(1~3月)の89.5%から約10ポイント減少したことにも触れ、通商政策の不確定要素が大きな要因だとの見解を示した。

主要ファッションブランドが多く加盟する米国アパレル・履物協会(AAFA)は、2018年に米国で販売されたアパレルの42%、履物の69%は中国からの輸入であるため、全てのアパレル・履物製品が含まれるリスト4への関税賦課はこの産業と消費者に甚大な影響を及ぼすとの懸念外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示した。同協会のリック・フェルヘンバイン会長兼CEOも「今こそ議会が立ち上がり、米国憲法で保障された外国との通商交渉における権限を議会に取り戻すべきだ」と訴えた。

他方で、繊維製造業者が多く加盟する全米繊維団体協議会(NCTO)は「中国の知的財産権の窃取、乱用は長きにわたって米国の繊維産業とそのサプライチェーンに多大な被害をもたらし、米国繊維業界の雇用喪失につながった」と述べ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、さらなる追加関税は「米国への製造拠点回帰につながると信じている」との見解を示し、政権のさらなる追加関税措置への支持を表明した。

なお、8月5日時点でまだ米国通商代表部(USTR)からの追加関税に関する正式な発表はなく、最終的な対象品目は明らかにされていない。

(注)追加関税の対象になるとみられる品目は、1974年通商法301条に基づく第4弾の対中追加関税候補として、USTRが5月13日に公表したリスト4(2019年5月14日記事参照)。

(須貝智也)

(米国、中国)

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