トランプ米大統領、対中追加関税リスト4の発動を9月1日と表明

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年08月02日

トランプ米大統領は8月1日、自身のツイッターを通じて、3,000億ドル相当の中国原産の輸入品に対して、9月1日から10%の追加関税を賦課すると表明した。対象になるとみられる品目は、1974年通商法301条に基づく第4弾の対中追加関税候補として、米国通商代表部(USTR)が5月13日に公表したリスト4だ(2019年5月14日記事参照)。現時点で25%の追加関税が賦課されている2,500億ドル相当の輸入品と合わせた場合、中国原産のほぼ全ての輸入品が追加関税の対象となる。現時点では大統領のツイッターの発言のみが情報源で、USTRからの発表はない。

米中両国は、7月30~31日に上海で閣僚級の貿易協議を行ったが、目立った合意はなかった(2019年7月31日記事参照)。トランプ大統領はツイッターで、中国は約束した米国の農産品の購入拡大と、米国でのフェンタニル(注1)の販売停止を履行していないと指摘し、これらが今回の追加関税発動の背景にあると示唆している。しかし他方で、「中国との間で貿易に関する包括的な合意ができるよう前向きな対話を継続し、われわれ2国間の未来がとても明るいものとなるよう期待している」と、交渉継続の意思も明らかにした。次回の協議は9月上旬にワシントンで行う予定となっている。

リスト4には、携帯電話やノートパソコンを含む機械機器、玩具・スポーツ用品、縫製品、履物など消費財が6割以上を占めるとの見方もあり(注2)、一般消費者への影響が懸念されることから、トランプ大統領は2020年の大統領選挙への影響も考慮して、追加関税の発動には慎重とされてきた。USTRは6月17~25日に、リスト4の追加関税賦課に関する公聴会を開催したが、参加した在米企業の多くからも追加関税に反対の意見が出されていた。

ピーター・ナバロ通商製造業政策局長は8月1日午前、トランプ大統領による追加関税発動の表明前に行われたフォックス・ビジネスニュースのインタビューで、「中国から戻ったロバート・ライトハイザーUSTR代表とスティーブ・ムニューシン財務長官が大統領に交渉結果を報告しており、午後にどのような判断が出てくるか忍耐強く待つ必要がある」と述べていた。その上で、同氏は対中追加関税について、「中国による知的財産権の侵害、技術の強制移転、ハッキングに対する防御手段であり、(追加関税による)コストは中国が支払っている。実際に、中国の生産者は輸出の減少に伴い、収入減に直面している。われわれは関税を非常に好んでいる。素晴らしいものだ」と発言しており、政権の対中通商政策の中心に関税があることを強調した。

(注1)医療用麻薬のオピオイドの一種。米国では使用者が死亡する事例が増加しているとされ、トランプ大統領も重要な政策課題に挙げている。米国移民・関税執行局(ICE)は2018年10月の報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、米国で流通するフェンタニルのほとんどは中国から流入しているとしている。トランプ大統領はこれまで、習近平国家主席に同薬物を規制薬物に指定するよう働き掛けていた。

(注2)リスト4の関税対象品目の内訳などの分析に関しては、2019年6月7日記事を参照。

(磯部真一)

(米国、中国)

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