土地私有化を容認、歴史的転換となる土地制度改革実施へ

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月27日

シャフカト・ミルジヨエフ大統領は2019年8月13日、共和国法第552号「非農業向け土地区画の私有化について」に署名、公布した。同法は、ウズベキスタン独立後、旧ソ連から承継していた土地公有制度から私有制度への転換を図るもの。

同法は全44条から成り、a.総則(法の目的、定義、原則など)、b.政府の管理(政府権限など)、c.私有化の手続き(申請対象者、境界画定、支払いなど)、d.政府所有地の私有化(同)、e.私有化区画の法的地位(所有者の権利・義務など)、f.付則(発行日など)の6章から構成される。

全編を通じて意識されているのが「透明性」(第4条、第9条)。政府は、私有化に関する情報への自由なアクセスを提供する義務を負う。土地区画の私有化が可能な主体は、ウズベキスタン国民と同国法人(第3条)。私有化対象の土地は、a.法人が所有する建物および造営物、生産インフラが所在する土地およびそれに付属し生産活動に必要な土地区画、b.自然人の個人住宅の建設・利用に供されている土地区画、c.自由な(利用されていない)土地区画、d.経済産業省付属「都市化基金」に所属する土地区画(第10条)。

一方、私有化の対象外となる土地は、a.区画整備が行われていない区画、b.鉱物資源埋蔵地、政府の戦略的対象物の所在地など、c.自然・文化・都市インフラ利用区画など、d.危険物質汚染区画、e.自由経済区・小工業区(税優遇供与対象地)の区画(第11条)。

既に利用されている区画の私有化は売買契約で行われ、自由区画の私有化(売却)は都市化基金が管理するオンライン・オークションを通じて実施される(第13条)。私有化による歳入は都市化基金に算入される(第14条)。申請書の提出は各地の政府サービスセンターもしくは政府ポータルサイトを経由する(第23条)。申請拒否は法律に明記された事由のみ可能とする(第24条)。また、私有化後に政府が買い上げできる場合のケースについては第37条に定める(都市計画上の必要性、鉱物資源埋蔵の確認がされた場合など)。法律の施行は2020年3月1日から(第44条)。私有化の手続き・ルールなどの詳細は今後、閣僚会議、政府地方機関、国土地理国家委員会、国家資産管理庁、都市化基金が定める(第2章)。

今回の土地改革に対する一般市民の反応は、「歴史的な出来事」と評する声のほか、「国民の知る権利が重要」「2020年3月までに土地の買いあさりが起きるのでは」などとさまざまな声が出ている。現在、ウズベキスタンでは建設分野の成長が目立つ(2019年7月30日記事参照)。今回の土地私有化制度への転換は、建設・不動産分野をはじめとする関連サービス市場(金融など)で資金の動きを加速させ、経済に幅広い影響を与えることが想定される。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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