新ビザ制度の本格導入で優秀な海外人材を呼び込む

(オーストラリア)

シドニー発

2019年08月20日

オーストラリアで、科学技術の発展やイノベーション創出に貢献する優秀な海外人材を受け入れるためのビザ制度「グローバル・タレント・スキーム(GTS)」(2018年7月5日記事参照)が試験運用を終え、本格導入されることとなった。名称を新たに「GTES(The Global Talent - Employer Sponsored)」として、イノベーション人材をオーストラリアへ呼び込むことを目指す。

ビザの申請要件は試験運用時から変更なく、人材を受け入れるスポンサー企業に応じて、「既存企業」と「新興企業」の2つの区分が用意されている。この制度の利用に当たっては、他の就労ビザの職業リストに含まれない高度人材のみが対象とされる点に注意が必要だ。スポンサー企業は外国人の就労ビザとして一般的なTSSビザでは対応できないことを証明する必要があるだけでなく、オーストラリアの労働市場で適切な人材を確保できないことを証明しなければならない。

2018年7月から1年間の試験運用では、23社が制度利用に関する合意を締結した。その多くは「既存企業」枠で、資源大手のリオティント、小売り大手のコールズ、ソフトウエア開発のアトラシアンなどが名前を連ねる。「新興企業」枠では、量子コンピューティング技術を持つQ-CTRL、ロケット開発のギルモア・スペース・テクノロジー、自動運転分野のバラハなど5社がこの制度を利用している。

デビット・コールマン移民・市民権・多文化相は、オーストラリア企業が優秀な海外人材を雇用することの経済的メリットを強調するとともに、「その技術と知識がオーストラリア企業に移転され、国内のさらなる雇用創出を可能にする」と述べた。

さらに、コールマン移民相は年間5,000人の高度技術者へ永住ビザの早期発給を可能にする「Global Talent Independent Program」の導入にも言及した。今後、人工知能(AI)や量子コンピューティング、フィンテック、アグリテックなど高成長が見込まれる新興産業をオーストラリア国内に構築するため、世界各国から最も優秀な人材を呼び込むとしている。

(住裕美)

(オーストラリア)

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