経済相が辞任、大統領予備選後の政治変化を受け

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年08月20日

アルゼンチンのニコラス・ドゥホブネ経済相が8月17日、辞任を発表した。8月11日に行われた大統領選挙の予備選挙でマウリシオ・マクリ大統領が敗北したことを受け、自国通貨ペソや株式指数メルバルの下落などで市場が混乱した(2019年8月13日記事参照)。後任にはエルナン・ラクンサ・ブエノスアイレス州経済相が就任する。

ドゥホブネ経済相は地場のガリシア銀行のチーフエコノミストなどを経て、2017年1月から財務相(現・経済相)に就任。マクリ政権が目指していたODED加盟に向けて、財政規律の確立などを目指していた。2018年4月のアルゼンチン経済の変調以降、IMFの総額564億ドルの大型融資枠を得る際には、迅速な実現に向けた調整能力を発揮した。しかし、プライマリーバランス・ゼロの実現のために、前政権下で多額の補助金が投入されて廉価となっていた公共料金の見直しによりインフレ圧力が強まったことなどが、今回のマクリ大統領大敗につながる間接的な要因になったともされている。

ドゥホブネ経済相は17日にマクリ大統領に宛てた書簡で、歳出と財政赤字の削減などは達成できたものの、予備選挙以降の政治環境の変化によって辞任することが適切との考えに至った、と伝えた(「エルクロニスタ」紙8月17日)。

ラクンサ新経済相は17日からの3連休にマクリ大統領、サンドレリス中央銀行総裁、前任のドゥホブネ氏などと協議。「クラリン」紙(8月19日)によると、短期的な取り組みとして、(1)予備選挙によって生じた混乱を落ち着かせ、マクロ経済指標を安定させること、(2)現実的なメッセージを通じて民心を落ち着かせること、(3)財政再建プログラム、IMFとの約束事を堅持することを念頭に置いているとされる。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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