米司法省がTモバイルとスプリントの合併承認も、州提訴の障壁残る

(米国)

ニューヨーク発

2019年07月29日

司法省は7月26日、米国携帯電話サービス3位のTモバイルUSと、4位でソフトバンク傘下のスプリントの合併を条件付きで承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。265億ドル規模の合併となり、業界1位のベライゾン、2位のAT&Tに迫る規模となる。本件に関しては、米連邦通信委員会(FCC)も5月に、合併を支持すると表明していた(2019年5月23日記事参照)。しかし、ニューヨーク州やカリフォルニア州をはじめ、10を超える州やコロンビア自治区の司法長官は、合併が消費者にコスト負担増を与えるリスクがあるとして、日本の独占禁止法に当たる反トラスト法に基づく、合併差し止めを求める提訴をしており、合併完了にはまだ障壁が残る。

司法省が提示した条件は、米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークが、次世代通信規格の5Gネットワークに基づく携帯電話サービスが提供できるように、(1)同社に対して合併2社が有する通信網に7年間アクセスする権利を与え、(2)最低2万カ所の携帯基地局および数百におよぶ販売実店舗にアクセスする権利を与えるとともに、(3)スプリントが持つ「ブースト・モバイル」「バージン・モバイルUSA」「スプリント・プリペイド」などのプリペイド携帯サービスを売却することとされている。

司法省のマカン・デラヒム司法次官補は「これらの措置により、ディッシュがワイヤレス市場での破壊的勢力(disruptive force)になる」として、今回の合併を認めても、携帯電話サービス市場での競争が維持される点を強調した。ディッシュ・ネットワークは7月26日、FCCに対して、2023年6月までに米国の人口の70%をカバーする5Gネットワークを構築することを約束外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。他方、Tモバイルとスプリントも、5月にFCCの支持を取り付ける上で、3年以内に米国の人口の97%をカバーする5Gネットワークを構築し、6年以内にその範囲を99%まで拡大する約束をしている。司法省の承認を受けてアジト・パイFCC委員長は声明を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、Tモバイルとスプリントによる約束は「5Gにおける米国のリーダーシップを推進するとともに、競争を守るものだ」と評価した。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 f822b1f90574ab80