EUとのFTA、7月16日のメルコスール首脳会議で締結の承認目指す

(メルコスール、EU、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)

米州課

2019年07月01日

メルコスールとEUは6月27日、自由貿易協定(FTA)の政治合意に至った(2019年7月1日記事参照)。2つの経済圏は1999年7月1日にメルコスール・EU協力枠組み協定を発効後、2000年4月にFTA交渉を開始し、中断がありながらも約20年間、数次にわたる交渉を重ねてきた。

メルコスールは域外国・地域と特恵関税協定を新規で締結する場合、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの加盟4カ国による全会一致での承認を必要とするコンセンサス方式を採用している〔メルコスール共同市場審議会(CMC)決議32号、2000年〕。従って、EUと協定を締結するには、まずCMCで決議を採択する必要がある。2019年7月16日にアルゼンチンのサンタフェ市でメルコスール首脳会議が開催される予定となっており、CMCによってEUとのFTA締結が承認される可能性が高い。CMCで承認された後、国内での条約批准手続きが開始される。ここで注意すべきは、EUとのFTA発効時にはコンセンサス方式は採用されない。つまり、4カ国全ての国内手続きが終了しなくとも、手続きが終了した国から順次、協定の発効に至る。

アルゼンチンとブラジルの足並みがそろい交渉妥結に進展

メルコスールは半年ごとに議長国を交代する制度を採っており、国名の頭文字のアルファベット順に持ち回る。またCMCは通常12月と、6月または7月に開催され、同時に議長国が交代する。2019年上半期はアルゼンチンが議長国で、7月16日の首脳会議後の下半期はブラジルが議長国となる。議長国はメルコスール域内のルール変更や、域外国・地域との交渉のイニシアチブをとることができる。

今回のEUとの合意には、政治的な2つの要因があったとみられる。1つ目は、2018年にG20議長国だったアルゼンチンが、同年のG20首脳会議でEUと交渉妥結に至ることができなかったことだ。また、アルゼンチンは10月27日に大統領選挙を控えており、メルコスール議長国というタイミングを生かして選挙戦が本格化する前の妥結を急いだ。2つ目は、1月にブラジルのジャイール・ボルソナーロ政権が発足したことだ。同大統領は就任前、対外通商交渉はメルコスールという単位ではなく、ブラジル単体として行っていくというスタンスを示唆していた。しかし実際は、メルコスールという経済圏を尊重し、アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領に賛同して、EUとのFTA交渉を進めたことが大きな後ろ盾となったといえる。

(志賀大祐)

(メルコスール、EU、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)

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