欧州産業連盟、次期欧州委にブレグジット問題への現実的対応を要請

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年07月18日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は7月16日、意見書「企業が次期欧州委員会に対し、発足から100日間に実施を期待する50項目」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2019年7月18日記事参照)を明らかにしたが、この中で「英国のEU離脱(ブレグジット)対策」について、合意なき離脱(ノー・ディール)の回避と、英国議会での離脱協定案の承認を引き続き追究することを次期欧州委員会に要請した。ノー・ディールとなった場合でも、欧州企業に対する悪影響を極小化する対応も求めている。

「データ」「モノ」「ヒト」の相互交流継続を注視する欧州産業界

同連盟は、ノー・ディールの場合のEU側の対策として3点を提言。まず、EU・英国間をはじめとする「データ移転」の問題を例示し、欧州企業の事業運営上の悪影響を抑止するための緊急対策を慎重に検討し、課題を克服するべきと指摘した。ブレグジットに伴い、英国はEUの個人データ保護規則(GDPR)の視点で「域外国」として扱われるため、個人データ保護水準についてEU・英国相互の十分性認定(注)などの法的枠組みを整備する必要がある。

同連盟は2点目として、ブレグジットに伴うEU・英国間の新たな通関手続き上の要件を欧州企業が順守できるように支援することも欧州委員会に求めた。新たな通関手続きでは混乱や誤解も想定されることから、「(通関法令上の)悪意のない違反行為」については「現実的な対応」を講ずるよう、欧州委員会からEU加盟国に指導することを要請した。

3点目として、ブレグジット後のEU・英国間の企業内転勤者の処遇について、「相互主義の原則」に基づく対応を求めた。具体的には、ブレグジット後、EU域内で滞在・就労する英国企業の従業員(英国市民)が現行のEU指令に準拠するかたちでEU域内にとどまる権利を保障する前提として、英国内で滞在・就労するEU企業の従業員(EU市民)に対して同等の処遇を英国政府が認めることを求めるとしている。

(注)EUと第三国が個人データに関する保護レベルについて相互に同等と認める決定(2019年1月24日記事参照)。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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