サンフランシスコで移民児童収容施設の閉鎖を訴える抗議デモが発生

(米国)

サンフランシスコ発

2019年07月11日

7月2日午後にサンフランシスコの中心街で、移民児童の収容施設(注)の閉鎖を訴える数百人規模(報道ベース)の抗議デモ運動が起こった。デモは道路を埋め尽くし、動員されたサンフランシスコ市の警察官がデモの整理に当たった。

主催は、米国の非営利組織「ムーブオン(Move on Org)」(1998年設立)。同組織のフェイスブックによると、国内最大の独立系革新団体で、数百万の会員を擁するという。政治プロセスに、人々の声と力を高めていくことをミッションに掲げており、現在はトランプ大統領を糾弾する活動を展開している。運動の1つに「トランプの反移民アジェンダに立ち上がる」を掲げ、トランプ政権によってつくり出された意図的でかつ非人道的な状況に移民は毎日苦しんでいる、と主張する。

同日に40州以上で175を超える同様の抗議デモ

デモ参加者は、「施設を閉鎖せよ」「施設に児童を隔離するのをやめよ」「児童虐待をやめよ」などと書かれたプラカードを掲げて、施設の閉鎖を訴えた。同組織のウェブサイトによると、同じ時間帯に、西海岸ではパロアルト、ロサンゼルス、ポートランド、シアトルなど複数都市で同様の抗議デモが開催された。7月2日に、全米40州以上で175を超える同様の抗議デモを開催したという。

こうした移民の収容施設は、大統領選の論点でもある。報道によると、トランプ政権発足以降、収容人数は増えており、2018年には1日当たり平均4万5,890人と過去最高となったという。

6月28日には民主党の大統領候補(カマラ・ハリス氏、クリステン・ジリブランド氏、ピート・ブッティジェッジ氏、ジュリアン・カストロ氏、ジョン・ヒッケンルーパー氏)(各大統領候補者の詳細は、2019年4月10記事参照)が、トランプ政権の国境警備の扱いに対する統一戦線を示すため、フロリダ州マイアミのホームステッドにある民間の移民児童施設を訪問した。ここには、米国保健福祉省難民入植局のレポートによると、2019年5月30日時点で13~17歳の2,240人の児童が同施設に住んでいたという。訪問者の1人であるカリフォルニア州の上院議員のカマラ・ハリス氏が「私たちは児童が施設に隔離されている状況を許さないだろう。まず最初にやることはこうした施設の閉鎖だ」などと話したほか、各民主党大統領候補は訪問後、メディアへのインタビューで施設の閉鎖を訴えていた。最近の世論調査では、大統領選挙の重要項目として移民政策が、経済、ヘルスケアに次いで3位に挙がっている(2019年7月10日記事参照)。

写真 移民の児童施設の閉鎖を訴えるデモ参加者(ジェトロ撮影)

移民の児童施設の閉鎖を訴えるデモ参加者(ジェトロ撮影)

写真 サンフランシスコ中心街の道路を埋め尽くすデモ(ジェトロ撮影)

サンフランシスコ中心街の道路を埋め尽くすデモ(ジェトロ撮影)

(注)運動で指しているとみられる施設は、米国保健福祉省が管理する「同伴者のいない外国人児童(Unaccompanied alien children:UAC)収容施設」。米国保健福祉省難民入植局は、UACを(1)米国において合法的な移民の身分を持っていない、(2)18歳未満、(3)米国に世話や親権を提供できる親または合法的な保護者がいない、と定義している。施設の児童は、米国内のスポンサーとなる親に引き取られるか、本国に戻される。入植局のレポートによると、こうした施設の児童の平均滞在日数は45日間。報道によると、同施設内の制約された状況を「刑務所のような状況」と訴える意見もある。

(石橋裕貴)

(米国)

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