健康寿命伸長に向けた健康診断・予防医療体制整備を強調、保健相が活動報告

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年05月01日

ベロニカ・スクボルツォワ保健相は4月24日、2018年の保健省の活動報告に関するスピーチを行った。同保健相は、ロシアが直面する医療・ヘルスケア分野の主要な問題に向けた取り組みを披露し、とりわけ、健康寿命の伸長に向けた健康診断・予防医療体制の整備に注力するとした。

スピーチの冒頭では、2018年のロシアにおける平均寿命が72.9歳(前年比0.2歳増)に達し、男女の平均寿命差が10歳以下に縮まったと指摘した。平均寿命伸長の背景には死亡者数の減少があるとし、その中でも、大統領指示に基づく周産期センター(注1)の建設・開設が各地で進んでいることを背景に、周産期死亡率が低下し、44の連邦構成体では、ロシア全体の平均乳児死亡率(1,000人当たり5.1人)を下回り、32の連邦構成体では、妊産婦死亡者数がゼロだったと述べた。

加えて、さらなる健康寿命の伸長に向け、診断医療を拡充することを強調した。国家プロジェクト「ヘルスケア」(注2)では、18歳以上の国民を対象に毎年の定期予防診断を、40歳以上に毎年の健康診断を義務付けるとうたっている。これに向け、強制医療保険制度の見直しを含めた手続き面の修正が不可欠とし、さらに、受診できる医療機関のリストを作成・ウェブサイト公開し、土曜日でも受診できるよう、医師の休日勤務手当を拠出するなど、体制整備に取り組むと述べた。

医療分野の研究開発にも大きな成果があったと言及した。ロシアで初めての国産の経カテーテル大動脈人工弁や生理活性化コーティングを用いた眼科領域の移植片、骨誘導性を有するチタン製インプラントの開発など、30以上のテーマが臨床段階にあるとし、脳卒中などを起こした患者のリハビリロボット「エコキスト2」は既に商業生産段階にあると指摘した。加えて、腫瘍学、免疫学、微生物学、ウイルス学、ワクチン学、再生医療、神経科学分野のヒトの疾患への対処に向けたゲノム技術、分子遺伝学技術、遺伝子工学技術分野の革新的プロジェクトが実施されており、世界最先端の医療技術に取り組んでいると述べた。

スピーチ内容は、上記のほか、感染症予防、健康維持・増進政策、医療・リハビリ施設や救急医療体制の整備、医療サービスの品質向上、難病対策、医薬品試験場の整備と低品質・模倣医薬品への対処、地方部の医療体制整備に向けた医療従事者の育成・拡大、給与引き上げを含む医者の労働条件の改善、遠隔医療などデジタル技術の導入など、多岐にわたった。

(注1)妊娠22週から出生後7日未満の間に発生しやすい、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態に対処するための施設。

(注2)2018年12月24日に、大統領付属戦略発展国家プロジェクト評議会幹部会合において承認。2019~2024年の保健医療政策および目標指標、投入予算などを規定している。

(齋藤寛)

(ロシア)

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