英国産業界、新首相にノー・ディール回避の警鐘

(英国)

ロンドン発

2019年07月24日

ボリス・ジョンソン前外相が7月23日に英国・保守党党首に選出され、新首相になることが決まる中(2019年7月24日記事参照)、各産業団体からは英国のEU離脱(ブレグジット)対応などへの姿勢に関して、無秩序な離脱を回避することを求める声明を相次いで発表した。

英国産業連盟(CBI)のキャロライン・フェアバーン事務局長は、ジョンソン氏に祝辞を述べるとともに、今後100日以内に企業に対し透明性と予見性を提供する合意が必要だとし、「新首相は良い合意による恩恵を軽視してはならない」と述べたほか、新たな移民システムやインフラ整備などの課題に早期に着手すべきと警告した。

英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長は、新首相による企業支援の必要性を強調し、「英国全体に苦痛をもたらし、世界との貿易を破壊する無秩序な離脱を回避するために、政府がどういった施策をとるか知る必要がある」と述べた上で、新首相に対して現実的かつ迅速な対応を求めた。

英国経営者協会(IoD)のエドウィン・モーガン暫定事務局長は、新政権は多くの企業が現在、苦慮する状況にあることを認識し、企業を支援することが重要だとした。また、何ら合意なくEUを離脱するノー・ディールに関しては「不透明性を増長し、多くの問題を発生させるのみであり、無秩序な離脱を回避することで、企業が(本来)抱える問題の解決に注力し、国民全員の利益に向け、前進することができる」と述べた。企業支援のための方策としては、中小企業のブレグジット対応に係る財政支援、人材育成システムの刷新、企業投資へのインセンティブ設定、不動産に係る事業税(ビジネス・レート)の低減などを提言している。

小規模企業連盟(FSB)のマイク・チェリー会長は「ジョンソン氏の保守党党首選の選挙活動中に前向きな議論を交わした」とし、英国下院で支持多数を得る企業寄りのEU離脱協定を確保することが新政権にとっての最初のタスクだとした。新首相に対しては、ビジネス・レートのルール改善、中小企業向けの労働コスト低減施策、英国の通信インフラへの投資によるビジネス環境の整備を求める。

(木下裕之)

(英国)

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