世界銀行がエジプトの経済成長加速を予測、輸出の課題解決が重要

(エジプト)

カイロ発

2019年07月25日

世界銀行はエジプトの経済事情をまとめた「エジプト・エコノミックモニター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を2015年以来4年ぶりに公表し、エジプト投資・国際協力省とともにカイロで7月16日、セミナー「Egypt Economic Monitor~経済回復から成長へ:エジプトの輸出産業を新たな段階へ~」を開催した。

登壇した世界銀行のホダ・ユーセフ上級エコノミストは、2016年以降の政府の経済再生プログラムによるエネルギー補助金削減や付加価値税(VAT)導入などにより、財政赤字が縮小したことを示した。また、外貨準備高の増加、インフレ率の安定化、失業率低下など多くのマクロ経済指標が改善されていると報告した。GDP成長率は、2016/2017年度(2016年7月~2017年6月)の4.2%から2017/2018年度は5.3%に上昇し、2021年までに6.0%に達すると予測した。エジプト政府の経済再生プログラムは、「アラブの春」以降の経済混乱が落ち着いた点で、IMFも高く評価している(2019年5月27日記事参照)。

さらなる経済成長のためには、輸出産業の発展が重要で、国際的需要を見越した産業育成、通関手続きの簡素化・効率化、貿易制度の改善、国際物流網の構築が必要と説明した。世界銀行の「ビジネス環境ランキング2019」によると、輸出通関手続きはOECD諸国が平均2.4時間、中東・北アフリカ諸国が平均67時間のところ、エジプトは88時間と大幅に上回る。総合ランキングも世界190カ国中で120位だった。貿易やビジネス環境の課題解決と、効果的な輸出政策を打ち出せるかが経済成長維持のカギとなっている。

「エジプト・エコノミックモニター」によると、2017/2018年度の輸出額は2011/2012年度以降最大となり、GDPの10.5%を占めた。輸出分野は、石油・ガスが34.0%、食品が12.0%、化学製品が10.6%で、付加価値の高い商品が少ないという。現在、エジプトで比較優位のある商品は、繊維・じゅうたん、肥料、野菜・果実としている。エジプト中央動員統計局によると、2018年の輸出品目は、原油・石油製品、既製服、肥料、プラスチック一次製品、調製食料品などの割合が多く、いずれも対前年比増となっている(表参照)。国別にみると、イタリア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、米国、サウジアラビア、英国の順に多く、地域ではアラブ諸国やEUへの輸出が多かった。

表 エジプトの輸出主要品目、輸出先国

(井澤壌士)

(エジプト)

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