EUとのFTA締結合意、アルゼンチンの与野党間に温度差

(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール、EU)

ブエノスアイレス発

2019年07月02日

20年近くにわたる交渉を経て、メルコスールとEUが6月27日に自由貿易協定(FTA)の締結に政治合意した(2019年7月1日記事参照)。マウリシオ・マクリ大統領率いるアルゼンチン現政権にとって、今回の政治合意は、今後10月27日に行われる大統領選挙にも影響を与える可能性がある。

2019年上半期のメルコスール議長国であるアルゼンチン政府は、交渉の最終局面での牽引役を果たした。ホルヘ・フォリー外務・宗務相は、合意達成直後に感極まった声でマクリ大統領に電話報告したほどで、アルゼンチン政府にとっては、今回の合意は悲願だったといえる。マクリ大統領は合意直後のフェイスブックの投稿で、政権としては発足直後から、国際社会のルールの尊重や賢い統合、関係の強化が不可欠との認識の下、この長年の交渉の妥結を位置付けてきていた。今回の政治合意は、マクリ政権にとっての大きな成果となる。

現地メディアの「ラ・ナシオン・マス」でコラムニストのクラウディオ・ハケリン氏は、7月7日から正式に開始する大統領選挙戦で与党は、対外的な実績として今回のEUとの合意、対内的な実績としては次々と完成をみせているインフラを強調するだろうと述べている。

一方、大統領選挙の世論調査で先頭を走る野党ペロン党急進派は、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(CFK)前大統領期には、与党として保護主義や企業の国営化といった内向きの政策を続けてきた。今回の発表に対して、当時首相を務めたアルベルト・フェルナンデス大統領候補はツイッターで、「アルゼンチンの産業と雇用と考えると祝う気になれない」と批判。同じく、CFK前大統領期に経済財務相だったアクセル・キシロフ・ブエノスアイレス州知事候補やデボラ・ジョルジ元産業相も、今回の決定を軒並み批判するなど、大統領選挙を前に与野党間で明確な対立軸がみえてきている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール、EU)

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