スパコンめぐる米中の攻防が激化、中国企業5社のEL追加

(中国、米国)

中国北アジア課

2019年07月04日

米国商務省は6月24日、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)の開発に関わる中国企業5社を輸出規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に追加すると官報で発表した(2019年7月3日記事参照)。

追加されたのは、曙光(Sugon)、海光(Higon)、成都海光集成電路、成都海光微電子技術、無錫江南計算技術研究所。曙光は、中国国務院系の研究機関である中国科学院の傘下にあり、海光の筆頭株主でもある。海光は2016年に米国半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と合弁会社を2社設立しており、これらが成都海光集成電路、成都海光微電子技術だ。

毎年6月と11月に発表されているスパコンの計算速度の世界ランキング「TOP500」の最新版(6月発表)では、曙光のスパコンが63台ランクインしている。

スパコンの技術開発をめぐっては、米中間で熾烈(しれつ)な競争を繰り広げている。中国企業は2013年から2017年まで連続10期、首位を獲得したが、2018年からは米国企業が首位を奪還。直近の6月のランキングでも、米国企業が1位と2位の座を占め、中国企業の最高位は3位だった。江蘇省半導体協会のある専門家によると、「トランプ大統領は就任以来、スパコンを非常に重視しており、多くの科学研究分野の予算を削減する一方で、スパコンに関わる予算は減らすどころか増やしている」と指摘している(「科技日報」6月25日)。

また、同技術は核兵器やミサイル防衛、暗号技術などにも大きく関わるとされることから、厳格な貿易管理の対象となる。米国は2015年にも国家スパコン長沙センター、国家スパコン広州センター、国家スパコン天津センター、国防科技大学の4機関をELに追加している。上述の海光とAMDとの合弁会社設立に対しても、米国の国家安全保障に関わる政府関係者は、長きにわたり懸念を提起していたとされる(「ウォールストリート・ジャーナル」紙6月21日)。

曙光は今回の措置を受けて、「弊社の日常業務運営のみならず、われわれの世界中の協力パートナーとの正常な連携にも影響を及ぼしている。弊社および関連企業の業務状況に対する米国関連機関の理解には、比較的大きな逸脱があると認識している。今回の決定には事実根拠が乏しく、各方面の利益に合致しない。今後、関係機関との意思疎通を積極的に図り、対話を通して理解を深め、今後の影響を最小限に止めたい」とコメントしている(「曙光WeChat」公式アカウント6月26日)。

(小林伶)

(中国、米国)

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