EU環境政党はEU・メルコスールFTAに難色

(EU、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール)

ブリュッセル発

2019年07月01日

欧州議会の会派の1つである欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループは6月29日、約20年越しの交渉を経て、政治合意(2019年7月1日記事参照)に達したEU・メルコスール間の自由貿易協定(FTA)について、批判する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。今回の政治合意について、欧州の主要産業団体の多くは支持を表明している(2019年7月1日記事参照)が、同協定発効にはEU理事会と欧州議会の承認が必要となる。同グループは5月に行われた欧州議会選挙で得票を伸ばし、同議会内会派として第4位に躍進(2019年5月27日記事参照)。同議会での審議にも影響力を持つ。

欧州議会・左派系政党は今後の論議・チェックを想定

GREENS/EFAグループは声明で、同協定に関する政治合意について、「あしき妥協の産物。持続可能な開発を求める声が高まる誤ったタイミングで結ばれた」と批判する。

同グループはEUのFTAについて、強制力のある社会基準や環境基準を保障し、森林伐採や土地投機などに歯止めを掛けるものであるべき、と主張。「同協定の代償は農業事業者や自然環境が支払うことになる」と指摘、同協定に対して難色を示している。

他方、欧州議会の中道左派会派である社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)は6月27日付の声明で、同協定についての支持を表明したが、労働者の権利保護や環境基準の保障が前提にあると指摘。協定テキストが公開されていない点も指摘し、今後、特に「持続可能な開発」に関わる条項を精査する方針を明らかにしている。S&Dが同協定を支持する条件として、「気候変動に関わるパリ協定やILOが定める中核的労働基準(2019年6月26日記事参照)の順守が担保されること」および「双方の農業生産者の公正な競争条件の確保」を挙げ、これらの条件に対するメルコスール側の対応が不十分な場合、再交渉の可能性も示唆した。

(前田篤穂)

(EU、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール)

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