米CSIS、有識者や産業界がファーウェイへの規制に関して賛否を議論

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年07月02日

米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は6月28日、「米国は(中国の)華為技術(ファーウェイ)のビジネスを厳格に規制すべきか」と題して、トランプ政権によるファーウェイに対する米国製品の輸出規制(2019年5月16日記事参照)に関して、有識者や産業界の代表を招いての討論イベント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った(注)。

討論は、規制について賛成派、反対派に分かれて議論を交わすかたちで行われた。賛成派には、米中央情報局(CIA)や国防省での勤務経験を持つマーティン・ラッサー新米国安全保障センター(CNAS)シニアフェローと、金融リサーチ会社ウルフパック・リサーチのダン・デビッド創業者が参加。反対派には、米国通商代表部(USTR)や連邦議会での勤務経験を持つ米中ビジネス協議会のエリン・エニス上級副社長と、ユーラシア・グループでグローバルレベルの技術政策を担当するポール・トリオロ部長が参加。司会は、CSISのスコット・ケネディ中国部長が務めた。

規制賛成派はファーウェイと中国政府の関係性を強調

賛成派は、ファーウェイは中国政府と密接な関係にあるとし、同社が中国政府の地政学的な狙いに沿って行動するリスクがある、と強調した。次世代通信規格の第5世代移動通信システム(5G)が世界に普及していけば、社会のほぼ全ての活動が5Gを介することになるため、リスクのある技術の導入は避けるべきとした。ラッサー氏は「5Gの普及は急ぐべきものではなく、正しく行うべきものだ」とした。

また規制賛成派は、これは米国のみの懸念ではないとして、諸外国も同様の措置を取るべきとした。この点、オーストラリアとニュージーランドは5G整備網からファーウェイを排除する方針を明らかにしているが、欧州諸国は各国ごとの判断となっており、全面排除には至っていない。

規制反対派は中国政府による米企業への報復を懸念

規制反対派は、米国企業が中国で報復を受ける懸念があるとし、安全保障と商業上の利益をバランスさせる中間地点を見いだすべきと主張した。エニス氏は、このままでは米国企業が国外最大市場の中国での競争的地位を失うことになると指摘。かつ、米国半導体メーカーが中国の顧客を失った場合、イノベーションに投じる研究開発費を賄えなくリスクがあるとした。実際に、米国半導体大手マイクロンにとって、ファーウェイは同社の売上高の13%を占める最大の顧客で、今回の規制によって同社は2019年度第3四半期(3~5月)に約2億ドルの売り上げを失った、としている。同社はその後、社内の法的な精査を経た上で、ファーウェイに対する一部製品の供給を再開している。エニス氏は、米国だけが外国企業1社を狙い撃ちする措置ではなく、他国も巻き込んで、輸出管理に関するより包括的な法の支配の枠組みを構築すべきだと主張した。

トリオロ氏は、ファーウェイはあくまで5G通信網に機器を供給する役割が主で、通信網全体は各国の通信キャリアが管轄するものだとして、通信網におけるリスクは制御できるとの見方を示した。さらに、ファーウェイの機器が既に各国の通信インフラを支えている中で、その利用が禁止された場合のコストも考慮に入れる必要があるとした。この点、欧州諸国は官と民の間で、サイバーセキュリティーとサプライチェーンの管理コストをバランス良く考慮した方針を参考にすべきとした。

CSISが、来場者にファーウェイへの規制に賛成か反対かのアンケートを、イベントの冒頭と終了後に2回取ったところ、冒頭時は賛成52%(67人)、反対48%(61人)だった割合が、イベント終了時には賛成56%(72人)、反対44%(57人)との結果となった。

(注)トランプ政権は5月16日にファーウェイおよび関連68社への輸出規制について、その4日後の5月20日、条件付きで規制の一部を90日間猶予する措置を発表している(2019年5月21日記事参照)。また、トランプ大統領は、6月29日の中国の習近平国家主席との首脳会談後の会見で、「米国企業は国家の緊急的な問題に関連しない機材についてはファーウェイに販売することができる」とし、ファーウェイへの輸出許可の緩和を示唆した(2019年7月1日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、中国)

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