自動車産業の短・中期目標を設定、国産自動車の競争力強化急ぐ

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年07月29日

ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は7月18日、大統領決定第4397号「自動車産業発展の加速に関する追加的措置について」に署名し、「2019~2023年の自動車産業の基礎的指標」を設定した。製造分野では、国有企業ウズアフトサノアトを主体とした短期計画「2019~2020年の自動車産業のさらなる発展に関するロードマップ」を承認。同社内にプロジェクトオフィスを設置し、a.輸出、b.法規・技術規制整備、c.投資環境、d.人材育成、e.金融の5つを柱に作業を進める。販売分野では、国産車公式ディーラーで「下取り(トレードイン)」制度を導入することなどを関係省庁に指示し、国産車の販売増と国際競争力の強化に向けた措置をとっている。

「基礎的指標」で定められた具体的数値目標は次のとおり。a.乗用車製造台数の年間35万台までの引き上げ、b.乗用車製造の現地化水準を60%まで引き上げ、c.トラック・バスの製造台数の年間1万台までの引き上げ、d.自動車輸出台数の年間10万台までの引き上げ、e.統合基幹業務システム(ERP、注1)の導入、f.モデルの見直しと大衆車へのシフト、g.ウズアフトサノアト傘下企業2社以上の新規株式公開(IPO)の実施。

ウズアフトサノアトへの支援策については、a.自動車生産に関しウズアフトサノアトに課せられる物品税の免除(2019年10月以降)と(通常、購入者が負担する)新車取得税の国産自動車製造者による負担(注2)、b.事業パートナーである米国ゼネラルモーターズ(GM、2019年7月11日記事参照)との交渉を2019年12月1日までにまとめ、2021~2022年に乗用車の新モデル部品の現地製造に向けた7億ドル以上の投資を実施することなどが明記されている。

販売面での支援策では、2019年10月1日からウズアフトサノアトのディーラー網で「トレードイン」制度を導入する(注3)。同ディーラー網でウズベキスタン(同社)製自動車を下取りに出し、新車を購入する場合には、a.付加価値税の非加算、b.売買契約書に対する公証手続きの省略、c.ディーラーが取得した中古車を内務省に登録する際の手数料の免除、などを定め、現在ほぼ市場でのシェアが100%に近いウズベキスタン国産車の買い換えを、再び国産車へとスムーズに誘導する。

ウズベキスタンでは10月1日から、ウズアフトサノアト(および関連企業)など国有企業に認められてきた付加価値税の免税措置が撤回される予定で、販売台数の落ち込みなども予想される。今回の措置は、同国の直近の課題としての自動車輸出・販売台数増と、将来的な国内での市場原理導入に向け、ウズアフトサノアトの競争力強化に向けた内容となっている。

(注1)ERP:企業の基幹業務である財務管理や生産管理、販売管理、人事管理などにおいて、業務間のコンピュータシステムやデータの連携を図り、各業務の部分的な最適から企業全体での最適が得られるような統合的な業務運営を行うシステム。

(注2)ウズアフトサノアトは、免除された物品税(3%)と新たに負担する新車取得税(3%)とを相殺するため、実質的な負担増はなく、一方で国産車購入者は新車取得税が免除されるため、結果として国産自動車販売(製造)台数増につながる可能性がある。

(注3)現在、中古車の売買は、a.市郊外などにある「中古車市場」での売買、b.ウェブサイトでの個人広告を経由した個人売買が基本となっている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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