ロス米商務長官、ファーウェイへの輸出規制緩和示唆も詳細はなお不透明

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年07月11日

ウィルバー・ロス米国商務長官は7月9日、商務省産業安全保障局(BIS)の年次総会での基調講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制の方針に関して、「大統領がG20サミットで示した方針を実施すべく、商務省は米国の安全保障に対する脅威がないものについては許可を出していく」と述べた。ただし、「ファーウェイ自体はエンティティー・リスト(EL)に残り、(同社に米国製品・技術・ソフトウエアを輸出する場合に)商務省の許可が必要な品目も、(同社への輸出を)原則不許可とする点も変わらない」とした。ロス商務長官の今回の発言に基づくと、基本的には5月16日に発表した規制内容の枠組みは変えず、運用面で個別具体的に判断をしていくことになりそうだ。

基本的なルールの枠組みは変わらず

商務省は5月16日に、ファーウェイと関連68社を「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為を行っている」として、同省が管理するELに掲載した上で、原則として同社に米国の製品・技術・ソフトウエアを輸出することは不許可となるとの扱い(presumption of denial)としていた(2019年5月16日記事参照)。ただし、商務省は5月20日、既存サービスの保守など特定の取引に限り8月19日まで、ファーウェイなどと取引ができる緩和措置を発表した(2019年5月21日記事参照)。その後、トランプ大統領は、6月29日に大阪で行われた米中首脳会談後の記者会見で、米国企業は国家の緊急的な問題に関連しない機材についてはファーウェイに販売できると同社への輸出規制の緩和を示唆し(2019年7月1日記事参照)、政権が新たな方針を発表することに関心が集まっていた。ファーウェイへの規制緩和については、米国議会の共和党、民主党両党の有力議員や、安全保障に詳しい米国の有識者らからも批判が出ていた。

なお、ラリー・クドロー国家経済会議委員長は7月9日に行われたCNBCによるインタビューで、「(ファーウェイへの緩和措置)は限られた期間のみとする」と発言しており、緩和措置の期間が限定的になる可能性を示唆している。

産業界からは、緩和措置の具体的な中身が不透明だとの声が出ている。ロイター(7月9日)は「何が米国の安全保障の脅威となるかについての具体的な方針は明確になっていない。産業界としてその線引きを知るには、実際に許可申請を出してみるしかない」との在ワシントンの通商弁護士の発言を紹介している。

(磯部真一)

(米国、中国)

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