マクロン大統領、G20とG7を控え日仏企業を前に講演

(フランス、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年06月28日

日本を訪問中のフランスのエマニュエル・マクロン大統領は6月27日、都内で開かれた討論会「Tech for good(仮訳:よりよい社会のための技術)」に登壇し、世界が直面する現代資本主義、デジタル技術、気候変動をめぐる危機への対処には、企業や関係機関による参画も重要だと呼び掛けた。

討論会では、フランスが8月24~26日に議長国を務めるG7首脳会議(ビアリッツ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを前に、同会議のテーマである「不平等との闘い」などに関する議論が行われた。在日フランス大使館と日本経済新聞社が主催し、産官学関係者や市民団体が参加した。

経団連の隅修三副会長は冒頭、経済界の自主的な取り組みを前提とした議論がG20とG7で行われることへの期待を示した。経団連はG20大阪サミット(首脳会議)に先立つ3月15日、G20の経済団体トップらを迎えて開催した「B20東京サミット」で、G20の各首脳に宛てた共同提言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を行った。人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などの技術に人の創造性を組み合わせ、新たな社会(Society5.0)を実現することで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するよう訴えるもので、「B20企業自主行動計画」を含む。

マクロン氏は講演で、国際社会が直面する「現代資本主義の危機(地域・国家間や性別間の格差」」「デジタル技術がもたらす危機(社会の不安定化)」「気候変動と生物多様性をめぐる危機」への対応がG7の中核となり、G20においても重要と述べた。

また、国際機関での議論が分野ごとの縦割りで行われ、保護主義によりWTOが機能不全に陥っている現状を「多国間主義の危機」と表現。世界的課題の解消には、各国政府のみならず、関係機関、企業などから成る「連合」を形成してルールを整備し、アセットマネジャーや年金基金といった投資家をも巻き込み、新たなモデルを作っていく必要があると強調。G7では一部の反対者を延々と待つことなく参画者を募るとして協力を呼び掛けた。さらに、「宣言」で終わらせず、決定事項の進捗状況について、NGOやメディアによるフォローアップを可能にすることが重要だとした。

マクロン氏は、この文脈でフランスが牽引してきた取り組みを紹介した。AI分野の倫理面のルール策定に関して、カナダとともに設立を発表した「人工知能に関する国際パネル(IPAI)」(2019年5月17日付地域・分析レポート参照)、国連や世界銀行と共催し投資のグリーン化にも踏み込んだ「気候変動サミット」、テロのプロパガンダへのSNS悪用を防止するため5月に主要国・機関のトップとIT大手企業がパリで採択した「クライストチャーチ宣言」だ。そして、生物多様性の保護についても、「連合」とロードマップの形成が必要だとした。

マクロン大統領はさらに、デジタル技術がもたらす危機への解はイノベーションや研究への投資に集団でコミットすることであり、欧州内で調整しつつ他の先進国とも取り組んでいくとした。26日の安倍晋三首相との首脳会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表された、デジタル分野もカバーする新たな日仏協力のロードマップ(2019~2023年)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)にも言及し、優れた産業ノウハウを持つ日本とフランスが乗り遅れることなく協力してリーダーシップをとる必要があると述べた。

写真 来日記念討論会「Tech for good」で講演するマクロン大統領(ジェトロ撮影)

来日記念討論会「Tech for good」で講演するマクロン大統領(ジェトロ撮影)

(上田暁子)

(フランス、日本)

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