ルスアルとクラスノヤルスク地方政府、アルミ現地加工を提案

(ロシア)

モスクワ発

2019年06月04日

アルミニウム世界大手ルスアルのクラスノヤルスク・アルミニウム精錬所は、年間100万トンの1次アルミニウム(アルミ地金)生産規模を誇り、ロシア全体でのアルミ地金生産量の約3割を占める。同社は、アルミ産業の付加価値向上のため、クラスノヤルスク地方政府との共同プロジェクトとして同精錬所内の空き地に「クラスノヤルスク・テクノロジー・バレー」を設置する方針だ。5月22日、同所「テクノロジー・バレー」プロジェクト長のイーゴリ・マルチェフ氏が日本企業関係者らに説明した。

写真 クラスノヤルスク・アルミニウム精錬所の内部(ジェトロ撮影)

クラスノヤルスク・アルミニウム精錬所の内部(ジェトロ撮影)

「テクノロジー・バレー」の敷地は100ヘクタール。精錬所で生産されるアルミ地金をもとに加工産業を誘致し、国内供給および輸出につなげたい考えだ。マルチェフ氏によると、クラスノヤルスク地方政府とともに「テクノロジー・バレー」を特別経済区とするよう、連邦政府に申請済みだ。特区の入居事業者は、法人税や資産税、域内での生産に利用される設備や材料の関税・付加価値税などの面で優遇措置が受けられる。

同プロジェクトは、クラスノヤルスク地方における開発プロジェクト「エニセイのシベリア」の中の1つとして位置付けられる。ロシア政府が4月1日に発表した「複合投資プロジェクト『エニセイのシベリア』として実現させる投資プロジェクト一覧」において、「テクノロジー・バレー」での工業生産型特区の設置が明記されているため、設置の公算は大きい。

マルチェフ氏の次に説明した、ロシア・アルミニウム協会のイリーナ・カゾフスカヤ共同代表は、ロシア国内で加工する場合の有望商品の1つとして、アルミ・ホイールの生産を挙げた。アルミ・ホイールの国内市場規模は850万本で、輸入品が約6割を占める。今後は国内外需要の高まりが期待され、300万~500万本の生産能力が追加で必要になるという。現在、国内のアルミ・ホイール市場は保護的な措置が取られている(2019年4月5日記事参照)。このほか、アルミ製調理器具、電気ケーブル、建材の加工を有望とした。日本側からは「クラスノヤルスクはロシアの中間に位置するため、消費地の欧州ロシアへは距離があり、物流が課題」という指摘があった。

モスクワ・ジャパンクラブ(商工会に相当)は、在ロシア日本大使館と共同で5月20~22日にクラスノヤルスク地方に視察団を派遣し、同地方のアレクサンドル・ウス知事と面談したほか、ルスアルのクラスノヤルスク精錬所を含む地元企業を視察、ルスアルにおいて「テクノロジー・バレー」構想の説明を受けた。

ルスアルは2018年4月に米国の制裁対象となったが猶予が続き、2019年1月に米国政府は同社を制裁対象から外した(2019年1月29日記事参照)。

(浅元薫哉)

(ロシア)

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