大統領選挙、与党推薦のトカエフ氏が圧勝

(カザフスタン)

タシケント発

2019年06月12日

6月9日に行われたカザフスタン大統領選挙(2019年4月10日記事2019年5月22日記事参照)の結果、与党のヌルオタン(輝ける祖国)党推薦で、ヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領が事実上の後継者に指名していたカシムジョマルト・トカエフ氏が、他の候補者に大差をつけて当選した。投票率は77.5%。トカエフ氏の得票率は70.96%で、対抗馬と評されていたウルト・タグドゥル(民族の命運)国民愛国運動のアミルジャン・コサノフ氏の得票は16.23%にとどまった。

不正訴える抗議デモ、改善が必要との外部評価も

メディアでも既に伝えらえているとおり、投票日には、首都のヌルスルタン市やアルマトイ市を中心に、各地で選挙の不正を訴える抗議デモが発生。内務省の発表によると、デモの参加者500人が連行された。選挙結果が発表された6月10日にもデモの動きがあり、ヌルスルタン市では、集会場所となりそうな広場で早朝から内務機関による厳戒態勢の警備が敷かれた。

選挙の後、ネット上では今回の選挙の不正についての証拠映像が流布されている。投票所の記入用ペンのインクが熱を加えると消せることを伝える動画や、1人の投票者が投票箱に複数の投票用紙を入れる映像などがソーシャルネット上に広がった。しかし、中央選挙管理委員会は、選挙は公正に行われており、これらの映像は「フェイク」だと主張している(「スプートニク・カザフスタン」6月10日)。

選挙監視団を派遣したOSCE PA(欧州安全保障協力機構議員会議)とODIHR(民主制度・人権事務所)は6月10日、「有権者が投票しやすいよう多数の投票所が設置されており、女性を含む7人が立候補するなど政治的多様性があった」と評価する一方で、「自由な選挙運動がほとんど行われず、憲法で保障されている集会および結社の自由に対する制限、表現の自由と情報へのアクセス権利が侵害されるなど、民主的選挙の要件を満たしているとは言いがたく、改善が必要」と報告した。

トカエフ新大統領は、トルコやルーマニアの監視団からは「なんら問題はなかった」と報告されたことを踏まえつつも、OSCE PA、ODIHRの報告に対しては冷静に受け止めたい、と語っている(「テングリニュース」6月10日)。新大統領の就任式は6月12日に行われる。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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