開かれたデジタル貿易求めるも、GAFA課税は導入方針

(スペイン)

マドリード発

2019年06月04日

スペインのデジタル貿易に対するスタンスは、政府、経済界ともにおおむねEUに協調したものとなっている。

政府は「10カ年経済国際化戦略(2017~2027年)」の中で、「EUが第三国と締結する経済連携協定が、越境デジタルビジネスや電子商取引(EC)を推進する内容となるよう働き掛け、スペイン企業がデジタル経済の商機を活用できるよう図る」と定めている。同戦略に基づいた現行の「行動計画(2019~2020年)」でも、WTOのような多角的な枠組みにおいても、ECの分野でより野心的な合意がなされるよう働き掛けていくとしている。

一方、スペインはEUの中でも、デジタルサービス課税指令案を英国やフランスとともに積極的に支持していた。ペドロ・サンチェス首相は2018年11~12月にアルゼンチンで開催された第13回G20首脳会議でも、「スペインは公平で時代に即した効率的な税制づくりと、脱税防止を優先政策事項に据え、他国に先駆けてデジタル課税の導入に取り組んでいる」と述べ、1月には「デジタルサービス課税(通称「グーグル税」)法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を下院に提出した。

その後、2月15日に同首相が下院の解散・総選挙を決定(2019年2月19日記事参照)したことで法案は頓挫。EU内でも指令案をめぐる合意は成立しなかったが、サンチェス政権は続投が決まれば、同法案を再提出する方針とみられる。

同法案は、スペイン国内での年間売上高が300万ユーロ超かつ連結売上高が7億5,000万ユーロ超の企業に対し、インターネット上の広告や仲介サービス、ユーザデータ販売などの「デジタルサービス」で得られる売り上げを対象として3%課税する。これは「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)に代表される多国籍ITサービス企業を標的とする一方で、EC小売り販売を適用除外とし、アパレル大手のインディテックスやエル・コルテ・イングレス百貨店、スーパーマーケット大手メルカドナなど、大規模なECサイトを持つ国内企業への課税を回避する仕組みとなっている。

電子・情報通信技術・デジタル事業者協会(AMETIC)は1月の同法案の下院提出を受けて、OECDやEU内での合意が未形成のデジタルサービス課税の拙速な導入は競争力の低下につながるとして、政府の方針を批判。課税は中小企業や消費者に転嫁されるだけだとも指摘している。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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