米商務省、レアアース確保に向け連邦国有地での開発・認可を急ぐ

(米国)

米州課

2019年06月20日

米国商務省は6月5日、これまで輸入に大きく依存してきたレアアースの供給確保に向け、連邦国有地などでの開発・認可などを迅速に行うとする報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

報告書は、2017年12月20日の大統領令「重要鉱物の安全で信頼できる供給に向けた連邦政府戦略に関する大統領令」を受けて、これを達成するための提言や目標を定めたもの。中国のレアアースへの依存を改善し、海外での調達先多様化を図るとともに、米国連邦国有地内で重要鉱物資源を探査し、開発プロジェクトの審査・承認期間を短縮することなどが盛り込まれている。

米国では、1960年代から1980年代にかけてカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山でレアアースを生産していたが、その後レアアースの採掘や精錬時の環境問題、採算性を理由に閉山が相次ぎ、レアアースの供給は中国からの安価な輸入品に代替されてきた。現在、米国は国内需要の過半を輸入に依存している。

米国地質調査所(USGS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、世界のレアアース生産量は2018年で17万トン(推計)だが、国別では中国が12万トンと全体の70%を占め、オーストラリアが2万トン、米国が1万5,000トン、ミャンマーが5,000トン、ロシアが2,600トンなどとなっている。一方、世界のレアアース埋蔵量は2018年時点で1億2,000万トンで、うち中国が4,400万トン、ブラジルとベトナムがそれぞれ2,200万トン、ロシア1,200万トンなどとなっており、米国の埋蔵量は140万トンにとどまっている。

米中貿易摩擦への切り札として、中国がレアアースの対米輸出規制に踏み切る可能性も取り沙汰されている(2019年6月14日記事参照)。しかし、中国が過去にレアアースの輸出規制を行った際、WTOの紛争処理上級委員会は2014年8月に協定違反としてこれを退けている。また、対米輸出規制となった場合、中国産のレアアースの国際価格が上昇し、その結果、これまで採算性を理由に米国内で縮小されてきた生産が、再び拡大していく可能もある。

(木村誠)

(米国)

ビジネス短信 c30d4e4b551e468b